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イモっぽい人工呼吸

男性 掌編小説

僕の顔は通称ネット用語でイモだ。

自称イモというわけではない。

幼少からイケメンと比べると毛気に隠れていたほうが良い、スポットライトを当てるべきでないようなことをクラスメイトに吹聴されていた。

僕の心は当初深く傷つき、どうして両親はこんな顔になることがわかってて僕を生んだのか、もっと美形の人と結婚しなかったのだろうかと思った。

ブサイクなのは母親のほうだった。

イケメンの父親は母親の外見よりも内面に惚れて結婚を決意したのだという。

どうせなら僕は父親似の容姿になりたかったと深く後悔している。

イケメンにはイモの気持ちは到底理解できまい。

イモと言われ幾度のチャンスを逃してきた。

第一印象は最重要で、それがよくなければ内面をまず見てもらうきっかけが持てない。

そんな惨劇に気づいたころには僕の心はすでに空洞となっていた。

好きな子に積極的に告り倒して、振られて折れ、それをネタに周りに嘲笑われ。

顔が悪いだけなのに、話の種なんて山ほどにあった。

いつ、どこで、何をして、何を感じたのか、どういったことが好きで、何に没頭しているときが一番快楽におぼれていられるのか、

共通点は・・・。

初対面なら話せるという人はよく見かけるが、僕はそういった類の人間ではないし、イモ同士の友達とは会話がかなりはずみ固いきずなで結ばれている。

毎日話していても飽きないくらいだ。

話を振るのはいつも僕からなのだから、話題性があるといえば僕が持ち寄る話のネタに違いない。

そう思い込むのも無理はない、いや必然的なのかもしれないと思うほど、僕の毎日では会話が自然、日常そのものなのだった。

イモと言われて数年、10年目に突入しようとしたとき、すなわち高校1年生に進級したころに僕に転機が訪れた。

入学当初、イモという呼称になれていたからかわいい子には全力で告りまくっていたから、校内では落とし神ならぬ落とせない神と呼ばれていた。

無論落とし神ならどんな女も自分の虜にできるわけでなんということはない、自分の魅惑に気づき近づくものであふれるだろう。

しかしながら逆であるから、そんなことはなかった。

転機が訪れたのは水泳の授業の時だった。

一人の女性のクラスメイトが水泳が苦手で周りからせかされ無理に泳いだところ足をつっておぼれてしまった。

早急に僕は水中に沈んだその子を助けた。

周りがおろおろ、どうするべきかはわかっているが、恥ずかしさのあまり手が出ない中で、僕は人工呼吸を施した。

イモの僕との接触。

到底許されるべき行為ではないかもしれないかもしれない。

咎められても僕は文句を言えなかったが、彼女は助けてくれたことに感銘を抱いていた。

そして今僕の横には彼女がいる。

休み時間は、下校時はいつも行動を共にするような仲だ。

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