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炒めるとおいしい毎日

フライパン 掌編小説

私は人に料理を出せない、出せと言われるとこれ以上にない辱めを受けていると感じるほど料理が苦手だ。

どうして私は料理がうまくいかないのか根本的な理由は意外とわかっていても行動に移せないのが現状だ。

調味料の扱い方、それぞれの調味料の持ち味や特徴、それらを一切理解していないから使うべきタイミングがまったくわからず、買ってもただ台所の下のほうで眠っているだけということが多い。

一人暮らしの後押しのために、母親が料理に必要な調味料を買いそろえてくれたのにも関わらず、毎日即席麺やコンビニで販売されている弁当を購入しては食べていた。

そんな生活が続くから、仕送りだけではカツカツでアルバイトを余儀なくされていて、年末年始に実家に帰るかと言われても、アルバイトが要因で帰宅できないと返答することが毎度のことだった。

もう2年も親と顔を合わせていない。

今頃なにをしてどうすごしているのやらまったくわからない。

仕事人の時間の経過は著しく速い。

そんな環境かだから、疲れ果てて帰宅するから料理なんてもっと疎遠な存在になっていった。

そしてそのまま大学3年生になったころ、就職前に一目私を見たいというから親のほうから私の住むアパートにやってきた。

そして、私が入学してから一度も自炊をしていないことがついにばれた。

その結果アルバイトを始めたきっかけも見破られる羽目となり、結果わたしは母に連れられて自炊のために料理本でも買いに行くことになるのかと思ったが、その考えはとって違った。

向かった先はホームセンターだった。

そこで深い底のフライパンを手に取ると私に買い与えてくれた。

どうやらこのフライパンで炒め物をするとどんな人が料理しても必ずおいしく仕上がるそうだ。

そんな夢物語のような物品がこの世に存在するわけがないと、母が地元に戻った後半信半疑で、買ったキャベツとにんじんを乱切りにしてフライパンで炒めてみた。

するとどうだろう。

調味料の使い方もいまいちわからない私の料理から、芳醇な香りがするではないか。

初めての料理でうまくいったかもしれないと思った私は心躍らせながら、味見のためにキャベツをひとかけら口にしてみた。

口の中にキャベツの甘味と絶妙な塩加減が伝わってきた。

これ本当に私が作ったものなのだろうか。

思わず目を疑った。

目を凝らしてみても、この部屋には自分しかいないし、作ったのは紛れもなく私だ。

この魔法のような味修正機能の付いたフライパンに感謝し私はその日の食事を楽しんだ。

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掌編小説私色日記Ⅱ
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