Vtuberとして活動するゆるねひぐさんが、自身の「メンヘラ」「発達障害」といった特性と関連付けて、脳の健康状態を気にする動画を公開しました。実際に脳ドックを受診し、その結果を公開する様子は多くの視聴者の関心を引いたことでしょう。この動画を参考に、脳ドックでわかること、発達障害と脳の関係、そして日頃から実践できる脳の健康維持について掘り下げてみましょう。
脳ドックでわかること:ゆるねひぐさんの結果から見る「異常なし」の意味

ゆるねひぐさんが受診した脳ドックでは、MRI(磁気共鳴画像)とMRA(磁気共鳴血管造影)が行われたとのことです。これらの検査は、脳の形態的な異常や脳血管の状態を詳細に調べることができます。
MRI検査:脳の形と構造をチェック
MRIは、強力な磁場と電波を利用して体内の水分を画像化する検査です。これにより、脳の組織、脳室(脳脊髄液が満たされている空間)、脳溝(脳の表面のしわ)などを詳細に観察できます。ゆるねひぐさんの結果では「脳室及び脳溝はほぼ正常台です」とあり、脳の萎縮や拡大といった形態的な異常は見られなかったことがわかります。また、「トルコ鞍において下垂体は情報に突出でやや目立ちますが、実年齢を考慮すれば総合の変化と考えます」という記述もありました。これは、脳の中にある下垂体というホルモン分泌を司る器官の位置について触れていますが、年齢を考慮すると特に問題ない範囲であると判断されたようです。
MRA検査:脳血管の異常を早期発見
MRAは、MRIと同じ原理で脳の血管だけを鮮明に画像化する検査です。この検査の主な目的は、脳動脈瘤(脳の血管にできるコブ)や脳血管の狭窄(血管が細くなること)、閉塞(血管が詰まること)などを発見することにあります。脳動脈瘤は破裂するとくも膜下出血を引き起こす可能性があり、血管の狭窄や閉塞は脳梗塞の原因となります。ゆるねひぐさんのMRAの結果は「特に異常なし」とのことで、脳梗塞や脳腫瘍に繋がるような血管の異常は指摘されなかったようです。
ゆるねひぐさんの結果は、脳の形態や血管に「特記すべき初見は指摘できませんでした」という「異常なし」の診断でした。これは、現在のところ脳腫瘍や脳出血、脳梗塞といった命に関わるような大きな病気の兆候は見られないことを意味します。
発達障害と脳:画像検査で全てがわかるわけではない
ゆるねひぐさんは、自身の「発達障害」と脳の関係について言及していました。「発達障害があると一応なんかMRIでも異常確認できるらしいんだけとここには特に書いてないね」という発言は、発達障害と脳画像の関係に対する一般的な疑問を反映しています。
発達障害は「脳の機能」の問題
結論から言うと、発達障害はMRIやMRAのような画像検査で直接的に診断されるものではありません。発達障害は、脳の特定の部位に明らかな損傷があるわけではなく、脳の機能的なネットワークや情報処理の仕方に特性があると考えられています。例えば、ADHD(注意欠陥・多動性障害)では注意や実行機能に関連する脳の部位の活動性の違い、ASD(自閉スペクトラム症)では社会性やコミュニケーションに関連する脳の部位の連携の違いなどが研究で示唆されていますが、これらは微細なものであり、一般的な脳ドックの画像で肉眼的に確認できるレベルの「異常」として指摘されることは稀です。
研究レベルでは脳の違いが報告されているが…
研究レベルでは、発達障害のある人とない人で、特定の脳部位の体積や接続性の違いが報告されることがあります。しかし、これらの違いは個人差が大きく、また診断基準として用いられることはありません。発達障害の診断は、本人の行動特性や発達歴、生育環境などを総合的に評価し、専門医が慎重に行います。脳ドックは、あくまでも脳の器質的な病変(脳腫瘍や脳梗塞など)を発見するための検査であり、発達障害の有無を判断するものではないことを理解しておく必要があります。
「スカスカ」に見える?脳ドック画像の一般的な見方
ゆるねひぐさんは動画の中で「なんかスカスカじゃない?気のせいかな」「スカスカの脳がみててああこんな感じなんやってなりましたね」と発言しています。これは、おそらく脳のMRI画像を見た際の一般的な感想かもしれません。
脳のしわと脳脊髄液
MRIの脳画像は、脳の表面にある多くのしわ(脳溝)や、脳の中にある脳室が黒く写ることがあります。これは、脳溝や脳室が脳脊髄液で満たされており、この液体がMRI画像では黒っぽく写る特性があるためです。したがって、画像を見て「スカスカ」に見えたとしても、それは必ずしも脳が萎縮しているわけではなく、正常な脳の構造を反映していることが多いのです。
まとめ:脳の健康と発達障害の理解に向けて
脳ドックは、脳の形態的な異常や血管の状態を確認する重要な検査ですが、発達障害のような機能的な特性を直接的に診断することはできません。ゆるねひぐさんの事例が示すように、「異常なし」という結果は、生命に関わる重大な疾患がないことを意味しますが、それは必ずしも日常生活での困難さや特性がないことを意味するわけではありません。
発達障害は脳の機能的な特性であり、その診断には専門医による総合的な評価が必要です。脳のMRI画像で「スカスカ」に見える部分は、実は正常な脳構造の一部であり、必ずしも異常を示すものではありません。
最も重要なのは、脳の健康状態を定期的にチェックしながらも、それぞれの個性や特性を理解し、適切なサポートを受けながら生活の質を向上させていくことです。医療技術の進歩により、私たちは脳についてより多くの情報を得られるようになりましたが、それは個人の多様性を理解し、受け入れることの重要性を否定するものではありません。
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