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Aランチの十字架

社内食堂 掌編小説

社内食堂がある職場に勤務する私は、日替わりメニューを食することを毎日の営みとしている。

労働のために会社に通勤するというよりは、ランチを楽しむのを前提に通い詰めているといっても過言ではない。

労働が過酷である肉体労働に比べるとIT企業勤務の私は体たらくともとられてしまうかもしれないが、私の勝負は頭脳でということで、体と頭脳のどちらで勝負するか選んだ末の結末と受け取っている。

その私の選択は正しかったと思うし、感覚的にホワイトな環境下で労働を続けられている。

入社前には気が付かなかった社内食堂は今ではお気に入りであり生きがいだ。

世間体では女性は必ず料理ができるようなイメージがあるが、私はそんなことはないと思うし、男女互いに誰か代わりに家事を担当してほしいと思っていることには間違いはないと私は思っている。

どこかのドラマで、夫の安月給ゆえに共働きになり、それでいて家事全般女性に丸投げ、それが当たり前のような世界観を描く男性諸君はことごとく女性の逆鱗に触れるという結末だ。

まぁ逆の立場なら私もその夫のように任せっきりにしてしまいがちかもしれない。

私は自炊というと、塩、しょうゆといった調味料単体で味付けをするだけで、複数の調味料をどう扱えば理想のような、ミラクルの味を醸し出せるのか知ったことではないのだ。

みんな料理スキルはいかにして学んでいるのか甚だ疑問であるが、現状私はというと社内食堂を利用する昼食以外は食パンや白米と玉子焼き、レトルトといった簡易的にできる料理のみに頼りきりで、一般的な質素の領域をはるかに超えていた。

レトルトの時点でコストパフォーマンス的に問題がありそうだが、私は値段はともかく料理のクオリティ的には質素と捉えている。

こんな生活ではレパートリーが少なくて脳も舌も貧しくなるのは時間の問題で、そのうち脳死しそう、この先続かなそう、食事が快楽から脱却しそうなどと思っていた社会人になりたての頃とはとって違う。

そんな私を社内食堂は救ったのだ。

死からの救済、十字架ランチと名付けられた社内食堂のABCランチはそれぞれ毎日日替わりで安価で提供されている。

今日は塩だれのお肉とネギの炒め物ときんぴらごぼう、白米と大根と鮭と細く切ったこんにゃくやニンジンの入った味噌汁だった。

その極楽を形どった私のお気に入りAランチ。

和食中心のそれは私のおなかの中を肥し、脳内に幸福のホルモンで満たしていく。

今日も私のランチ日和で、午後もまた頑張ろうと思える、休日より充実しているって思える気がしていた。

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