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都会のマント

マント 掌編小説

僕がその紅色のマントを手に取ったのはつい2日前のことだった。

田舎に住んでいた僕はネット社会になった今、都会の人間とよく比較をして田舎のものたりなさを痛感していた。

比較自体行動になんの影響もなく無意味な行為であることはわかっていても、ふとSNSを見たとき、ブログを見たときに無意識のうちに思ってしまうのである。

ああ、ここはやっぱり田舎なんだなと。

バスも一つ逃せば2時間待ちなんて普通で、地下鉄なんてもってのほか新幹線といったものは新時代の技術か何かかと思ってしまうほどだ。

一般的に言われる僕の住む場所は過疎地と呼ばれ、リモートワークで生計を立て、税金対策のために住んでいる資産家か農家の人間がほとんどだ。

店も中枢都市や大都市に行けばあるスーパーや専門店などなく、個人の小売店やコンビニ程度だ。

ネットにつながる前は自分の暮らしが一番裕福で満たされているものだと勘違いしていたし、そういった感覚に浸っていたほうが将来楽しくやっていたかもしれない。

でも僕は気づいてしまったんだ。

この世の差というものに。

差を埋めるには田舎のメリットを最大限アピールするか、生み出す必要がある。

地代が安い以外にはなく、賃貸もない田舎に関してのメリットというとしいて言えば広大な土地が安く自分のものにできるということくらいだろうか。

そんな現状に不満を不満を抱いていたさなかである。

僕は山奥の神の祠に手を合わせに行った。

神頼みで現状が打開できるとも思えなかったが、祈らないよりは祈ったほうが可能性は大いにあると思い、行動に移した次第だ。

元旦、毎年のように神社と祠にお参りすることが実ったのか、祈り終えた僕の手のひらには紅色の布が挟まれていた。

これはいったいなんだ?

スカーフ?

いや上部を見ると肩にかける部分が備えつけられている。

これはマントか?

そう思い、僕は肩にマントを纏ってみることにした。

そしてそのまま僕は家に戻り夕食を迎えたのだった。

「そのマント何?」

両親に問われたが、カッコつけでつけていると適当に流しておいた。

嘲笑されはしたが、僕には後悔はない。

それどころかいつもより、いやいままで味わったことのない風味の料理が口の中を翻弄し、優越感に浸っていたのだ。

マントを外せば、普通の秋刀魚の塩焼き、つければこの世のものとは思えない、いや僕が未経験なだけかもしれないが、かつて味わったことのない舌が喜ぶ深い味わいだった。

ずっとこの味を堪能していたい。

そう思うほどだ。

僕は田舎に生まれて、ネットにつながってすべてをあきらめていたが、もう自分を卑下する必要はなくなったようだ。

このマントのおかげで、自分はワンランク上の世界へと足を運んだかもしれないからだ。

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