ロゴユメ

地味子に惹かれる王子様

プロポーズ 掌編小説

私は後天的に盲目になった。

理由はわからないというか聞かされていない。

後天的だから聴力を含め目を除いた四感は人並みの能力しか備わっていなかったから、私はひどく絶望した。

そして見えないことがひどくストレスだった。

自分がいつ目覚めたのかは長い歳月を経てわかるようになってきたが、14歳半ばまで見えていて、15歳になる前に視界が突然真っ暗になった。

眼下によれば手術により、視力回復は見込めるが、レーザー治療のあまりにもの高額さに両親は手を引いたのだという。

金銭面はどうあがいたって状況は変わらない。自分がこうなったのも運命なのだと自分に言い聞かせるも、やはり現実は辛かった。

見えないことによる生活の不安、いずれ他界する両親のことでの不安。

考えれば無限大に心配な事項が思いつくものだ。

きりがない。

自分の脚は腕は、今どんなところにどんな状態で存在しているのか。

旧友はどんな人になっているのか。

知りたいこともたくさんあった。

真実を知りたくても私には耳しかない。

70%もの情報を得ると言われている目が機能していないのだから仕方がない。

耳で聞いた情報をすべて信じる以外に道がなかった。

私の状態や今後を気にしてか、ある日私の近くに両親が男を連れてきた。

縁談を持ち掛けた男性らしい。

こんな私をもらってくれる人がいるだなんて、思いもしなかった。

現在は様々なことをインターネット上で共有できるから、両親が何かと私の情報を流したのだろう。

「実に美しい、まじかで見られることに運命を感じるよ。」

私、どんな顔をしているのかな。

盲目になってから4年が過ぎていた。

それだけの歳月が過ぎれば童顔ではない。

たぶん大人らしい顔へと変貌を遂げていることだろう。

自分の顔もわからないなんて、そんな人が私以外にいるだろうか。

そうとさえ思えてしまう。

高らかな男の声は淡々と私の気に入ったところを語っているがどれも私の表面上のことばかりで、この男は見る目がないなと初回は思っていた。

後日また同じ声の男性が私を訪ねてきた。

大層私を気に入ったらしく、嫁にもらいたいと言い出した。

話が早すぎないかと思ったが、介護してくれる人の心配をしていた私にとっては都合の良い存在だったので口では縁談での事項を了承した。

つまりプロポーズを受け入れたのだ。

名は高明といったか。

一度だけ聞いた名を忘れないように脳内で毎日反芻した。

指名したときには彼は大層喜んだ。

名を覚えていただけなのになんて嬉しそうに話すのだろうか。

気が付けば彼と付き合ってからひと月たったころに私は光を感じるようになり徐々に見えるようになって、ついにあの声、高らかな声の彼の素顔を見るに至った王子様。

そう形容するのが正しいと思った。

私はなぜこんな美貌の彼と付き合っているのだろう。

自分の顔も確認したが、やはり納得ができず両親に真相を聞くと、私を助けたい、ぜひ救わせてくれと自ら懇願してきたのが彼だといった。

私の顔は一般的な、もっと言えば地味な風貌で、可愛いとは言えなかった。

だから私は思った。

彼は私の事情をネットで知り、愛人だから助けたというもっともらしい口実を残すために籍を入れたのだと。

そのことを彼に問うと、

「とってつければそうかもしれない、でも、君に一目ぼれしたのは本当だよ?」

一層彼のことが好きになった。

これからも好きでいられると思う。

きっと今以上に。

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