ロゴユメ

指秋晴れ

秋 掌編小説

願うのではない。

ただ指定の指を天高く30秒上げ続ければいいだけだ。

私の一族は代々秋の期間だけに天候を自在に操ることができる。

なぜ秋だけなのかと問うと理由は不確かで、血族が全員秋生まれで、生まれた時期にだけ力を行使することができるということを加味するならば説明はついたも同然だろうといわれてきた。

だが私は血族の一方が能力者でない、つまり天候を操る能力を持って育っていない側の人間とつがいになっているし、性行為の時期もまばらで、受精の時期を考えると必然的に秋に皆が生まれるという可能性は限りなく低い。

それとも何か、特殊な能力による牽引、操作により出産のタイミングが固定になるようになっているのだろうか。

あるいは血族で子作りをしたいと思う時期が、脳の構造上一致するようにプログラムされいているのか、そうできているのか。

また、生まれるのが女性だけに限っているのか、いやそれはないか、私には兄がいる。

生まれてくるのが必ずしも女性という固定概念は一切ないことはわかりきっている。

能力を発揮できる時期が秋に限定されていないのならどれだけ楽なことだろう。

好きな時に雨にしたり晴れにしたりできる。

台風みたいな天災はもとより完全に撤廃し、天候は私の意のままに操れるのにと思うばかりだ。

しかし、一つ疑問が湧いてくる。

同じ能力を持ち合わせた人間が混在する場合は天候の結果はどうなるのか。

最後に信号を発信した人間で上書きされ、その天候が持続するのだろうか。

そうしたならば、血族にまじめちゃんがいると非常に困ると思った。

私は自分の都合で天候を左右させたいのに、意のままに操れないじゃないか。

また操れたという実感すら得られないのかもしれない。

自分の能力の存在に気が付いたのもここ最近の話で、たまたま兄が天に向かって人差し指を向けて、まるで中二病のように、天気よ雨になれとか、晴れになれとか言った直後に天候が急変したのを目撃したのがきっかけで、私にもできるのかと思った。

同じ血族ならという発想だ。

兄に能力のことを問えば、やり方はみな同じ、時期さえ守れば血族であれば誰でも実行可能なのだという。

試しに兄の前で豪雨を降らせて、服をびしょ濡れにさせて怒られたが、私にも力が備わっていることは確かだ。

何かのかくし芸としても使えるかもしれないが、秋限定で自分のために力を使うもよし、他人のために力を使うもよしということで、私は一年に一時期だけの輝く可能性、その機会を与えられているのだ。

そう思うと、夏のこの長期休暇が過ぎるのがまた楽しみになるのである。

みんなに自慢したいからね。

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