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バランスの取れたポンジュース

ポンジュース 掌編小説

近年話題沸騰中の新たな味覚の嗜みとして提供されているバランスポンジュースというものがある。

なんといっても飲む人によって味の感じ方は様々で、その原料の一部であるデコポンはもはやミラクルを極めている代物である。

なぜなら、食する人によって味を変える、好みの味に変貌を遂げるなど現実では考えられないためである。

見た目はただの果実を絞ったジュースにしか見えない。

オレンジ色の、ニンジン多めの野菜ジュースのような色彩をしており、通常のポンジュースの黄色っぽいそれとはとって違っていた。

これ野菜ジュースだよといって出したとしても見た目からしては判断がつかないため、対象を騙すことは容易だと推測する。

そんなことはさておき、そんなジュースが我が家にもやってきた。

田舎であるからこそ容易に手に入ったのかもしれない。

都会なら生産はおろか、コスト面で運送費とか上乗せされて販売されていることだろう。

私は田舎に住んでいて初めて良いなと思った瞬間が、この都会でも話題沸騰のポンジュースが家に届いた時であった。

もともと生産工場と農家が近場にあったためただで譲り受けたから実際のところかなりおいしい展開だ。

後で感想を聞かせてもらえればよいからということで、2本ほど1リットルほどの瓶でいただいた。

早速私はコップにそれを注いで味を確かめてみた。

私の妹も真似するようにコップにそれを注いでごくごくと喉に流し込んでいた。

「なにこれ、今まで味わった中で一番おいしい。」

妹は言葉にならない声で叫んでいた。

どうやらとてもおいしいという意思表示のようだ。

妹が言葉を喪失するほどのうまみをみせつけたそのジュースの味の感想を問うと、しつこくない甘さですっきりしているのといった。

私の場合は、甘ったるくて口の中に残るくらいの味わいだったが、妹の好みはさっぱり系のようだった。

このように飲む人によって味をころころ変える田舎が生み出したミラクルジュースはもはや名物となっていた。

家族内でも話題となり、私の父親は物は試しで、お酒に入れながら飲んでいた。

ポンジュースとお酒って、ハイボールか何かかと思ったが通常なら甘酸っぱいだけのところ、父親曰く、口の中が透き通るすっきりさっぱりとした味わいのようだ。

お酒の良さが消えているのか、またお酒と混ぜた意味があったのかはわからないけれど、たぶん単体で飲んでも味は変わらないと思うけれど、何も突っ込みは入れずに、たしなむ父を見守っていた。

父親はひたすらにうまい!を連呼していた。

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