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死神のアンケート

死神 掌編小説

もう一度人生をやり直したいと思ったことはあるだろうか。

私はいまだかつてそう思ったことがなかったから、一度きりの人生の重みというものをアニメやドラマで見ていてもいまいちしっくりこなかった。

だからその辺、浅はかに考えていた。

そんなある日のことだ。

運の悪い日というものは意外にも連続して起こるもので、私はその日に限って部活で使うユニフォームを家に忘れてきたことに気づいた。

どうりで両手が軽く感じたわけだ。

急ぎで踵を返して家路に戻っていった。

ここまではよかったのだ。

いたって普通の日常のあるあるの流れでいった。

あと10分程、走ればそのくらいでぎりぎり遅刻は回避できるはずだった。

しかし不運というものは連なるもので、交差点を渡ろうと赤から青に変化した信号に従い、すぐに足を踏み出していった。

しかし、私の歩みは歩道には届かずに、空中を舞って地面に思いきりたたきつけられた。

そして神経が刺激される前に私の意識はどこかへ飛んで行った。

気が付くと私は横たわる自分を前にして立っていた。

え、私死んだの?

衝撃を受けて立ちつくす私を見かねてか、それともずっと一連の動作を見ていたのか不明だが、ものすごくタイミングよく大鎌を持った黒いマントに身を包んだ女性が目前に現れた。

一体私に何の用だろう・・。

思考が右往左往している中、落ち着いた感じでその人は私に語り掛けた。

「突然のことで何が何だかわからないかもしれないけれど、落ち着いて聞いてください。
私は死神、いわば死に近き者に死を与える者。
これから取るアンケートの聴衆結果によっては、あなたに死または生を与えます。」

死神が生を与えるだって?

それは神の仕事のように思えたが、この世界ではその摂理は通用しないのだろう。

「率直に聞きます。
あなたはまだ生きたいですか?」

躊躇いの一切はない。

車との接触の一瞬で、私の生命が絶たれるなんて・・。

自分の人生の楽しみは子らからなのに、死なんてあんまりだ。

私は言葉を発していた。

「私は生きたい。」

私の返答を聞くと彼女は微笑んだ。

直後、視界はまばゆい光に包まれ、私はさっき渡ろうとした横断歩道の前に立っていた。

スマホで時刻を確認すると、既に学校の始まっている時刻で遅刻を示唆していたが、今の私はそれでも良かれと思った。

だって、私の死はさっきの死神の影響力によって見逃されたのだから。

現実を塗り替えてくれた者に私は只々感謝し、二度目の人生を無にしないように生きようと思った。

急がば回れ、それが過去の私が今の私に告げる教訓となっている。

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