解離性障害、別名多重人格と呼ばれるそれはある時突然人が風変わりし、異質な存在としてとられてしまうものだ。
人がもし唐突に様態が変化したら、周囲のものと決別されても仕方がないと言えよう。
そういった人は言っても信じてもらえず、お前は最初から裏表のある性格だったのだろうと言われてそれまでだ。
だから私はそのうち一人でいるようになった友達を作らず過ごしていた。
だからといって別人格の自分と直接やり取りすることは出来ないから、スマホのメモ帳に自分の意識があるうちに起こったこと、体験したことを互いに書きながら情報交換をしていた。
今のところいつ入れ替わるのかが分からないから、メモを書いている途中で入れ替わってしまい伝達ができなかったことも回数はそう多くはないがあった。
メモを見ると見かけは女子だけれど中身は男であることが綴られていた。
まさか別の人格が異性だなんて、非常に恥ずかしいというか少々都合が悪いとは思ったもののしかしながら彼は私の身体には一切の興味もなかったらしかったから、今後気にすることはないと思った。
でも、多重人格のせいでやはりまた不都合なことが勃発した。
入れ替わった時、メモには何も書かれていなかたから、最初は何が起こったのかわからなかった。
教室に入ると嫌に視線が痛かった。
隣人に伺ってみれば噂で私が透子という女子の胸を揉んだのだという。
私はすぐに誰が犯人かわかった。
授業中だったので教員に見つからないようにスマホを机でうまく隠してメモ帳に私からのクレームを書き綴った。
(あなた、表面が女子だからって女という地位を悪用して透子の胸を揉んだでしょう。私の立場のこともあるんだから今後はやめて欲しいわ。あのロケットおっぱいには私も目はいっていたけれど、揉んだことはないのよ?とにかく今、雰囲気的に悪い状況だから絶対にやらないでね。いい?)
鼻息をふんすかさせながら少し呼吸荒く、興奮して文面を入力した。
後日スマホのメモ帳を見ると、了承できない、だって男だものという一文が書かれていて私の脳内で何かがプチンと切れる音が鳴った。
たまらず私は
「もうあんたなんかいらない、私は一人で生きていけるもの。」
と入力し、登校した。
それから記憶が飛躍して時刻は正午を示していた。
後30分で昼食の時間だというときに戻るなんて珍しいなと思い、スマホを見たら、別れよう。俺とお前とは合わない。
そう書かれていた。
でもそう書いただけで本当に多重人格を卒業できるか定かではなかった。
高校での初めての昼食をとった後、水道で鏡面をなんとなく見つめていた。
「外見は女、中は男かぁ。どうやったってギャップがありすぎてひかれるよね。」
いくら時間が経っても私と彼が入れ替わることはなかった。
「最後まで名前も知らなかったな。私のことだけたくさん知られて少しどころじゃないくらい理不尽じゃないか。」
誰もいない教室で一人、私はそんなことを呟いて、頬を膨らませた。
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