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四季と風鈴

カラー 掌編小説

室内に無機質な音が鳴り響く。

風鈴の音だ。

季節は秋なのだが、私の住居には夏の象徴である風鈴が、季節に限らず年中同じ場所に吊るされている。

単に片付けが面倒であそこに設置したままなのだと思ったが、父に聞くと魔除のためにと占い師に言われてつけているという。

当時幼かった私はこんな令和の時代に魔物が出るなんて信じ難かった。

比較的田舎の方とはいっても東京だ。

北海道みたいにガッツリ田舎というわけではない。

だから魔物が潜む場所なんてこの地にはないものだと思っていた。

でもその風鈴が本物なのかどうか気になった。

もしかしたらただの風鈴なのかもしれない。

父との会話だけでは納得できなかった私は触るなと言われていた風鈴に手をかけた。

そして風鈴は私の手から逃れるようにするりと抜けて地へと落ちていった。

ガシャン。

食器が割れる時のそれと同じ高い音がすると、その音を聞いて両親がこちらへと寄ってきた。

「何事だ。嗚呼、風鈴を割ってしまったのか。」

「ごめんなさい。」

怒られると思った。

だって大切な魔除の、この家を守護するための物品なのに。

しかし父は私を咎めなかった。

「怪我はないか?」

それどころか私を心配してくれたのだ。

泣きじゃくりながら、屈んだ父の肩へ抱きついた。

「私、風鈴を割っちゃったからこの家が魔物に襲われるんじゃないかって心配になって…それでそれで…。」

父は私の後頭部に手を回し、優しく摩った。

そして父は真実のように私に語りかけた。

「所詮占い師の言うことだ。人間のできることは限られている。フィクションの中の霊能力者みたいな人はきっと現実にはいない。」

「占い師が言ってることはでたらめ?」

「そうだでたらめだ。風鈴のことは気にすることはない。」

父のその言葉み私は安堵した。

次の日みなると新しい風鈴が吊るされていた。

昨日は私のためのああ言ったけれどやはり父は心配性なのだ。

リンリンリン…。

風に揺られて風鈴が音を奏でる。

甲高い風鈴の音は四季休むことなくなり続ける。

季節に相応しくないと思いながらも鳴り続ける。

そう鳴り続けているんだ。

大人になる頃に気がついたが、あの風鈴は風に吹かれてなっているのではない。

一般に言われる風とは違う。

霊の起こす風によって靡く風鈴だったのだ。

だからあの風鈴はこの家、霊に好かれた家には必要不可欠だと思った。

あの音色が霊を脅かし、守護しているのだとしたら、壊したり取り外したりすることが非常に恐ろしく感じられた。

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