ロゴユメ

次は僕の番

猫 掌編小説

薬が一般に出回る前に被験者に服用させて効果を見る。

一週間程度入院するだけで、楽で高額なバイトだから、あらかじめモルモットでテストされたものだから、不安よりも高額な報酬をもらえることの快感のほうが上だった。

初めてのバイトだったから少々手に汗を握ったが、待ち時間はそれほど長くなくすぐに指名された。

テスター、次は僕の番だ。

僕は重い腰を持ち上げると、診察室へ入っていった。

終わると病室に案内され、飲み薬を渡された。

どうやら食後に飲むタイプの薬品で腸内が活発に動いている時を狙って飲むのが最適と判断されているようだ。

昼食は外食並みに豪華だった。

レポーターじゃないのでうまく表現はできないが、頬っぺたが落ちそうなくらいうまかった。

そして指示薬を呑み横になった。

数時間後看護師が僕の様態を聞きにやってきた。

頭が突っ張った感じがする以外に変化はなかったことを告げると、彼女らは笑みをこぼす。

どうやら薬品の効果が適切に出ていると判断されたようだ。

授業中。

高校の授業はどうしてあくびが出るほどに退屈なのだろうか。

何となく教科書に目をやりながら自分の番が回ってきたときに備えていた。

「今日は18日だから18番の加藤、黒板の問題に答えてくれ。」

そんなやり取りがあるから数字とその日の時間割を呪うものだ。

今日は18を2で割って9なんて言われる可能性があるから浅田、つまり僕は用心している。

国語で作者の気持ちを答えろなんて難問、到底僕に解ける気はしないが念のため答えは探しておく。

それっぽい口実さえあれば、たとえあってなくても教師から1つや2つ突っ込まれてその場はしのげるから、そういった気で授業に臨んでいた。

案の定9日という日にちがあてられた。

さて、ここまで来てなんだか答えは実のところ思いついていない。

即興でも何を答えるべきか。

そういえば授業中の指示でさっき、アンダーラインを引いたなとふと思い出し、教科書に目をやった。

そして僕は悟った。

たぶんこれが答えなのだと。

とりあえず今は僕の番だ。

みんなが待っている。

早く答えなければ・・・。

黄昏の中の彼女は一層美しかった。

幻想的な背景に身を置く彼女そのものも幻想のようで、思わず胸がどきっと反応していしまう。

つややかな髪、目、口、顔のライン。

全てが整った姿は誰からも男女問わず注目を集めていた。

人気の高い彼女が気になってたまにこうしてストーキングまがいなことをしているわけだが、普通にバドミントン部で活動して、夜遅くに家に帰り、いたって他の子と何ら変わらない日常を送っていた。

ミステリアスな少女をイメージしていたが、割とそうでもなく、お近づきになりやすい雰囲気だった。

男である僕の目を初めに引いたのは、やはりたわわな胸だった。

それでいてスポーツ少女だなんて、目を引くところが様々だ。

ストーキングがばれたのか、ある日彼女から突然声をかけられた。

「ねぇあなた、確か私の隣のクラスの人よね。いつも私のことを食い入るように見ているけれど、私の顔に何かついているのかしら?」

「そんなことはないさ、つい君の容姿に惹かれてみていただけだよ。」

「馬鹿正直なのね。」

そういうと彼女は僕の手を引いて

「行きましょう。まだ話したいことがいっぱいあるのよ。」

普段様々な人が彼女にかかわるけれど、手を惹かれたところを見たことがない。

もしかして僕自身に興味が?

きっと次は僕の番なのだろう。

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