ロゴユメ

赤い稲妻

雷 掌編小説

幼いころより見ているものがある。

年内に必ず何回か姿を現すものだ。

赤い稲妻が走って近隣の避雷針にもっていかれて地面へと移動してゆく。

そう聞かされていた。

遠方から赤い稲妻が出ているのを伺ったことはあるのだが、近くで見たことはない。もし稲妻が直撃でもしたら危険だと考えていたからだ。

時は流れ私は18歳になった。

運悪く傘がないときに雨にあたってしまった。

コンビニでビニール傘を購入し、それをさして外へ出た。

雷雲が唸るようにゴロゴロと音を立てている。

もしかしたら・・・ふと思って避雷針のあるところを目指した。

今日ももしかしたら赤い稲妻が出てくるのかもしれない。

小さな可能性にかけて私は走った。

足元がびしゃびしゃと水の音が鳴る中、私ははじける水、しみる水を一切気にすることなく進んでいった。

避雷針の設置されている場所に来ると、そこに落ちていたのは白色の雷だった。

なんだ・・・普通の奴じゃないか。

私は肩を落として踵を返し、家路に戻ろうとした。

刹那、後方から赤色の光が反射してきて、驚きのあまり後ろを振り向く。

赤い稲妻!!

私は駆け寄り、一歩待間違えば通電しそうな距離間で、その稲妻を見つめていた。

なぜ赤なのか。

尋常ではない稲妻を前に疑問はあるが美しいとも思えた。

「そなたは赤色の理由を解明しに来た者か?」

突然どこからか反響した声が響く。

誰だ?

どこから話をかけている。

あたりをキョロキョロと見回していると、落雷のあったほうから、人の容姿をした女性が姿を現した。

これはどんな手品を使ったんだ?

私の心境を見透かしたかのように彼女は語った。

「これはマジックの類ではない。
私の能力をもって現世に姿を映し出しているのだ。」

雨音も冷たさも体が感じ取っている。夢ではない。

「あなたは何者なんですか?」

「私はこの世界を構築管理している神だ。」

神にしては若い容姿のヒトなんだなと思った。

自分の描く神はもう少し年輩というか、老いたイメージがあったから私は目を丸くした。

「まぁ信じられないのも無理はない。
生きているうちに人間が神を目にすることなど、数が限られているからな。
それも偶然が多数で、神に合わぬままこの世界を後にするものさえいるのだよ。」

へぇーと私は言うと、その後に続けて疑問を口にした。

「ならあの赤い雷は何ですか?」

神はクスクスと笑いながら、

「それは私のくしゃみだよ」
といった。

「この世界の天気は神の体調に帰属するから、体調が良好ならば天気は良くなっていくんだよ」

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