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自尊心の高いチップ

チップ 掌編小説

アメリカでは昔から主流だが、個人の接客の仕方がよければ料金をはずむ、通称チップをはずむというが、これが日本でも許されるとしたらどうかという思考実験で高くチップをはずむものは、自尊心や幸福度が高くなる傾向にあり、チップをもらった側もいつもより儲かったということで、接客に対するモチベーションが上がることがわかっている。

時給という制度に縛られて、個人の価値があまり表立っていない世の中なので、個人の評価が可視化される世界に私は夢を描いている。

私はそんなことを考えながら床についた。

朝目が覚めるといつも通り私の部屋の木造の天井が広がっていた。

木造がそもそも日本特有なのであるかどうかは私が知る限りのことではないが、コンクリートで作られた寒々とした空間よりは温かみを与えてくれるつくりと実感している。

そんな風景を目の当たりにしながら、私は状態を起こして身支度をし、朝食をとるために車で外出をした。

向かった先は最寄りのファストフード店だ。

アメリカン風の生活スタイルが私に身についているわけではないが、コンビニよりも近く開店時刻が早く長いのが特徴なので、よく私はそこを利用しており、もはや常連客だった。

いつも通りてりたまをほおばるために、朝のちょっとした列に並んだ。

早朝にしては並んでいるほうで、今日は特に時間を要しているようにも思えた。

時計とにらめっこしらながら、まだかまだかと待っていた。

あと一人で自分の番が回ってくるというところで、前方の人の会計の様子と見ると不可思議というか、今までには見られてない光景が目に飛び込んできた。

ここは確かに日本だよな。

この店内で新たなキャンペーンをやるようになったのだろうか。

前の客は会計上での金額以外に個人的にチップをはずんでいたのだ。

アメリカ式の店だったかといったん入り口に戻って確認しようとも思ったが、大蛇の列になっていたため断念した。

自分の番が来たとき、いつも通りてりたまとホットカップコーヒーSサイズを注文した。

店員の態度はきびきびとしていて、接客だけではなく、注文されてからオーダーを別の店員に流すまでが流暢に行われていた。

いつもは意識してなかったが、チップをはずむと意識しただけで私の眼の色が変わった、視点が変化した。

早朝で睡魔との闘いの時刻だというのに、健全で素早い接客業務の様子に私はいたく感動し、自信満々に念願のチップをはずむことにした。

夢であってほしくはない、この夢のようなシステム。

個人が個人を評価する世界はとても美しく、頑張りがいのあるものと思えた。

いつまでも続いてほしいと私は強く願った。

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