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ぼろぼろの飛び級

面接 掌編小説

僕の家は父子家庭で、父は働き盛りということもあって僕たちを養うために年中働きっぱなしで、ほとんど家を留守にしていた。

借りているアパートも冬に暖房を炊いたとしても隙間風が多く極寒の中に身を置いている気分だ。

昼食は給食があるから問題ないが、朝食と夕食に至っては、父が毎日テーブルに1000円札を置いていくのでそれで僕の妹と二人分をうまく賄っていた。

贅沢することは許されなかった。

食べるためだけに、その日をしのぐためだけに与えられた金銭。

その置かれたお金には当時なんの愛情も感じられなかった。

完全に冷め切った空間で、新たな話題も生み出せず、妹と二人家で過ごしていた。

少年団に入るためのお金もなく、ただひたすらに家で教科書を暇つぶしに眺める日々。

たまに日向ぼっこをしたり、妹と二人、公園に出かけたりしていた。

小学生のころまではそうだったが、中学に入ると妹は美術部に所属し、基本的に帰宅が午後6時を超えることが多くなった。

美術部は部費がなく、校内にある美術用品を好きなように、好きなだけ使えるということで絵は別に得意とか好きというわけでもなかった妹が所属し、生活は一変した。

妹が毎日作品を手掛け、家に持ち帰ってくることにより家に彩りが生まれたのだ。

暖かい幸せ。

中学3年の僕にはそれは刺激的に映った。

高校受験を控えている人が同世代に多いが、僕の家にはそんなお金はなく、修学旅行という最難関な金銭的ハードルが待ちま変えていることから行くのを断念した。

いくら高校授業料無償化とはいえ、食費代くらいしかもらえない中では、高校で必要な教材を買うことは到底できなかった。

だから僕は高校卒業認定試験を受験し、最寄りの大学に進学することにした。

いわゆる飛び級というやつだ。

日本において世帯年収が140万円を下回る場合、大学の学費が全額免除となる制度があるのでそれを使うつもりだ。

本当に、大学がものすごく近くにあることが救いだった。

ここで僕は人生を一発逆転しようと、毎日一食で頑張り続け、お金を貯めた。

そして受験はうまいこと合格し、大学受験もなんなくクリアした。

勉強付けの毎日で、妹にあまりかまってあげる余裕はなかったが、妹に聞けば兄である僕を心から応援してくれていたのだという。

その時の合格祈願の絵も家内に飾ってある。

お金もない、未来の目標もない。

だけれど、今勝ち取った崖っぷちの地位を最大限に活用して僕は、親を超えて明るい未来を切り開いて見せる。

毎日そう誓っているのだ。

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