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頼りない恋、今も正解はわからない

キス 掌編小説

今思えば頼りない恋をしていたんだと思う。

頑なな私は視野が狭く、誰かに縋ることさえしなかった。

当然相談もしなかった。

だからいつも遠回りで結果的に失敗していたんだ。

失恋した私の何がいけなかったのかは今ではよくわかる。

自分の強欲な気持ちを他人に知られることを恐れていたんだ。

もうその頃に戻る術はないから後悔することしかできないけれど、当時私を振った彼は閉鎖的な私の心情を恐らく汲み取っていたのだと思う。

私は自分に対するメリットを再シア限に追求するタイプでデメリットなんて思考の外だ。

だから相手への配慮が足りていなかったと思う。

でもそんな私を好きになってくれたのが今の夫だ。

失恋したことによる新たな出会いがある。

あの時私はふられていなかったら、他者のことを考慮する視点はなかったことと思う。

当時の私の恋事情は本当に胸を張って言えるものではなく、自分本位なところが強かったと思うけれど、今の私を支えているのは昔の彼の存在だ。

だから私は自分自身に語りかける。

覚えていて、ずっと覚えていて欲しい。

目前のことだけに囚われずに後先を考えて行動しようと決意したあの日のことを。

霧雨の降る日だった。

私は傘をさして学校へと向かった。

道中、クラスの中でも特に男子からの人気の行夜という男子が私と同じく傘をさして歩いている姿が何となく神秘的に思えた。

胸がキュッとなって瞳孔が開く。

気づけば彼氏10秒もの間直視していた。

なんて艶やかな容姿だろうか。

美形の顔を持ちながらも彼は文系の部活動に所属している。

美術部に入って勤しんでいることを知ったのはつい最近のこと。

2年になった今、なぜあれほどの人に1年の時に気づかなかったのか不思議に思えた。

今日こうして彼を眺めることになったのは偶然ではない。

彼の登場時刻を何度かの試行により導き出した末、得られた結果なのだ。

私をここまでさせる彼はきっと私の初恋の人なんだと思う。

彼をみただけで心臓が高鳴る。

私の心情よりも早く変動する。

ある日彼に初めて話をかけた。

私が一方的に名前や行動等を知っているだけで、彼は私の名前どころか顔も知らなかった。

少々心に痛みは感じたものの、私の今までを思い返せば自然の結果だと割り切ってしまえばすぐに凹んだものは元に戻った。

彼に頼んで私に似顔絵を描いてもらった。

さすが美術部というだけあって、鬼才の持ち主と思うほどの画力を誇っていた。

「写真じゃないよね?」

その問いかけに彼はにこやかに笑って否定した。

彼の描く絵が好き。

彼の目、鼻の形、絵への情熱。

彼に関するあらゆることに目が行くようになり、彼そのものが心底好いているんだと思った。

思い切って彼に告白してみたが案の定、彼は私に振り向いてはくれなかった。

今まで夢を見ていた気分だった。

私は自室のベッドで泣き寝入りをした。

今、なんであの時はOKしてくれなかったのか聞くと、突然のことで気持ちの整理がついていなかったかららしい。

でも、当時私を振った彼は今こうして私の隣にいる。

私はとても幸せだ。

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