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つかまり立ちする宝石

宝石 掌編小説

私は黒ずんだ宝石だ。

もう長年売れることなく店頭に置き去りにされ、ろくに手入れもされていなかった。

いわばすさんだ輝きを失った鉱石なのだ。

そんな鉱石の僕がどうにかして初めてのパートナーをつかみ取るにはどうすればよいのか必死に考えていた。

反射率に自信がないのなら宝石の置いてあるくぼみの一番高いところにつかまり立ちでもしてみるか。

はじめはそんなこと思いもしなかったが、他と違うことができる石の存在に気が付いてもらえればもしかしたら物好きな人が買ってくれるかもしれない。

僕はそう信じていた。

だが石がひとりでに動くということから奇怪、呪いの類かと思われたのか、私は廃棄されてしまった。

もう店にすら置いてもらえないのか。

これではパートナーをみつけるどころか、焼却されてそこらへんの石ころ同様の扱いになるんだろうなと思うとなんだか悲しくなってきた。

「多少黒ずんでいても僕はれっきとした宝石なんだぞ」

心の中でそう叫んだとしても、僕には口はないし、だれにも想いを理解されることはなかった。

ゴミ収集車に入れられそうになったところをすんでの思いで、回避し、その場に転げ落ちた。

ゴミステーションという最悪の場に僕は嫌悪しつつも、その場から必死に離れようと試みた。

こんなところより、河原で水と一緒に過ごすほうが楽しいに決まってる。

もしかしたら僕の輝きが流水によって取り戻せるかもしれない。

そう思うと河原を目指すめぼしはついた。

目標は定まったとはいえ、中枢都市のここには河原と呼べるところに行くにはだいぶ移動する必要があった。

そして直径1センチの僕の歩幅だといつになるのやら、日が暮れてもたどり着けそうにはなかった。

カラスにでも拾われて、河原に落ちてぇな。

そう考えて立ちすくんでいた時である。

僕に影が落ちた。

見上げると、僕をじっとのぞき込む童顔の少女が一人。

そして宝物をみつけて嬉しそうにするかのように僕を拾い上げて、

「私に拾われるなんてあなた運命ね。」

そういって彼女の家に連れていかれた。

彼女の父親は宝石職人で、僕をピッカピカに磨いてくれた。

彼女が戻ってきて、

「やっぱり、一目見た時からこんな輝きがあると思っていたの、きっとあなたは私のパートナーにふさわしいわ。」

それを聞いて僕は涙でも浮かべるように、きらりと体を光らせて見せた。

以前より研磨剤でつるつるになった僕の体には枠がはめられ、今では彼女の指輪という立ち位置にいる。

これでいつ何時も僕は彼女と一緒に光り続けられるんだ。

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