ロゴユメ

霊界の小説

作家 掌編小説

都市伝説だったかフィクションだったか覚えていないが、それが大きく注目を集め映画化されたことは記憶に新しい。

書き置きされた紙面には毎日空想に文面が綴られ、毎回内容は異なっていたそうだ。

中身はまるで書き初め、参入したばかりの作家のようで、拙い表現でA4サイズのルーズリーフを埋め尽くしていた。

文才ではないが勢いでひたすらに書き連ねたそれは、俯瞰的な物の見方をしていて、独特な雰囲気が漂っていた。

私は実際に目にしたことはないので、あくまで語り継がれた話の範疇だが、あれは誰かの悪戯ではなかった。

目を追うごとに文の表現のレベルが向上し、多彩な表現力からそれに惹かれていった者もいた。

やがて毎日更新される作品の深層を知る第一歩として、著者を知りたいと言い出す人物が現れた。

誰しも優れた作品の作者の人物像や経歴が気になるものだ。

その意見に皆賛同した。

そして作品が毎日更新される部屋の四隅にカメラが設置された。

皆声を揃えて明日が楽しみだと言った。

後日、やはり作品は更新されていた。

つまり、この小屋に誰かが入り、机に置かれたノートに追記していったということになる。

張り裂けそうな鼓動を抑えつつも、カメラに手をかけ映像をチェックした。

すると映像を確認した男性は奇声を上げた。

それに心底驚いた者たちがどうしたどうしたと、彼に近寄っていき、事情聴取しようとした。

するとまず映像を見てくれ、話はそれからだと言ったそうだ。

民衆は次々に交代で映像をチェックしていくと、ノートが一人でに開き、浮遊したペンがノートに向けて動いている様子が映し出されていた。

そこに人影一つとしてなかった。

「幽霊が創作活動しているなんて聞いたことがないぞ。」

推論を立てたものによると、生前にできなかった創作活動のことを想い、未練を果たすために活動し始めたのだとか。

誰かに危害を加えたとお事例もなく、寧ろ多数の人に自分の作品が良い意味で知れ渡っているから、霊にとっても良い刺激があるのではなかろうかと考える者もいた。

多数派がそれに賛同したため、その場は特にお祓いもせず、そのまま残っているとのこと。

この話を聞きつけて、友人に頼んで私はその地へ出向き、噂の小屋へと案内してもらった。

友人は霊に取り憑かれるのが嫌だからと、半分私の行為に反対していたが、友人が先に折れて、結局一緒にあの場所を訪れた。

小屋は木一色で年季の入っていそうな、一言で言えばボロい建造物だった。

戸を引いて開けると、ギィ…っというホラーでよくありそうな音が耳に入った。

内部に入ると丸テーブルが置かれており、そこには天井が穴が開いているせいか上部から光が差し込んでいた。

テーブルの上には噂のノートが置かれていた。

それを手に取りページをめくる。

少し皺を帯びたそれには自然と自己の理想を題材とした作品の数々が書き綴られていた。

まだ残りのページがある。

このページが埋まる頃には一体どんな作品が描かれているのだろうか。

私は残りのページから日数を逆算して、もう一度ここに来ようと思った。

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