桜の枝が風に揺れる中、有紀は学校の教室で机に向かっていた。
彼女は真剣な表情で数学の問題に取り組んでいる。
すると、隣の席に座っていたクラスメイトの伸一が声をかけてきた。
「有紀、ちょっといいかな?」
有紀は少し驚きながらも、伸一に向き直る。
「どうしたの、伸一くん?」
伸一は照れくさそうにしながらも、何かを言おうとしている様子だった。
「実は、桜の枝を使ったアート作品を作っているんだ。でも、自分の部屋に飾っておく枝がなくてさ。近くの公園に行っても枝を探してもなかなかいいのが見つからなくてさ。」
有紀は少し考え込んだ後、思いついたように言った。
「私の家の庭にはきれいな桜の木があるから、そこから取ってきてもいいよ。」
伸一は驚きの表情を浮かべながら、有紀に感謝の言葉を口にした。
「本当に?ありがとう、有紀!」
有紀は笑顔で頷いた。
「その代わり、ちゃんと授業にも集中してね。」
伸一はにっこりと笑って、教室を出ていった。
有紀はほっと一息ついたが、今度は自分が集中できなくなってしまった。
「私も伸一くんの作品が気になるな…」
有紀はそう思いながらも、再び問題に向かい始めた。
数日後、有紀は学校の帰り道に伸一と再会した。
彼は手に桜の枝を持っていた。
「有紀、見てくれ!」
伸一は興奮気味に有紀に枝を見せた。
枝には美しい桜の花が咲いており、まるで絵画のようだった。
有紀は感動しながら言った。
「すごい!本当にアート作品みたいだね。」
伸一は照れくさそうに笑いながら言った。
「ありがとう、有紀。おかげで素敵な作品が完成したよ。」
有紀は少し寂しそうに言った。
「でも、私はその素敵な作品を見るだけで、何もできないんだよね。」
伸一は驚いたように有紀を見つめ、言葉を返した。
「有紀、お前は自分自身が素敵な存在だと気づいているか?君の笑顔が、周りの人を幸せにするんだよ。」
有紀は伸一の言葉に少し驚きながらも、嬉しさで胸がいっぱいになった。
「ありがとう、伸一。それを言ってもらえると、自信がつくよ。」
伸一はにっこりと笑いながら有紀に枝を手渡す。
「これは君にプレゼントだ。自分自身が素敵な存在だと信じて、前に進んでほしい。」
有紀は感動しながら枝を受け取り、伸一にありがとうと言った。
「これからも、お互いに素敵な存在でいようね。」
二人は笑顔でお互いに手を振り合い、別れた。
有紀は枝を大切に持ち帰り、自分の部屋に飾った。
その枝が彼女に勇気や自信を与えてくれるような気がした。
そして、有紀は自分の存在が大切であることを改めて感じたのだった。
枝の花びらが散り、春の風が吹き抜ける中、有紀は新たな一歩を踏み出したのであった。
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