ロゴユメ

注文する息

唇 掌編小説

私が意図しないときに、注文が成立していたことに気が付いたのはつい最近のことだった。

あがり症の私は、人前で袋が必要かと言われてしまうと慌ててしまう習性があった。

中学生である今、こんな状態であるから今後この人見知りの特徴を払拭しなければ手に職をつけるというハードルを越えることはできないなとこのころからよく思っていた。

買い物のたびにそんなことを思っていたからか、私はある出来事に巻き込まれてしまったのかもしれない。

人の苦手分野を補うかのように、いつものように袋はいりますかという質疑に対して私は、ああ、ええとと言っている間に、ふぅっと呼気がこぼれ出た感覚があった。

私、ため息をついてしまったのかと一瞬思ったその次の瞬間には袋の代金は会計の中に含まれていた。

確かに私は何も答えていないのに会話が成立していたのは見て取れた。

レジ打ちの人が返事も待たずにPOSシステムを通すはずがなかったし、やはり何かおかしいと思った。

会計後ちょうど私は袋を頼む予定だったし、マイバッグを家に忘れてきていたのでちょうどよかったのだが、毎度袋が必要というのが吐息だとするのならば厄介ごとだと思った。

私は訳も分からない力に頼るよりは、自分の力で答えたほうがまだ気が楽と思ったので、除霊してもらうことにした。

結果は変わらず、除霊なんてただの儀式でもしかして人間に払うこと自体出来ないものなんじゃないか、そうすると人間ならざる者にたよるのか・・・?

そんな考えを膨らませつつマイバッグを持って私は会計に移った。

「袋はいりますか?」

その問いに対して私が答えようとする前に呼気がふぅっと出るのであった。

その現状を実感した私は純粋な怒りを覚えた。

自分の口にどうやって座標を合わせているのかも気にはなったが、それよりも何を伝えたのか私にはわからないという点と、自分の意思を伝えることができないというもどかしさといった様々な感情が入り混じっていた。

その日私は袋をもらってしまった。

正直今の私には不要なものだった。

後で分かったが、それは私にとりついた妖怪の仕業であり、除霊では払えず潜在意識や自分の行動を変えるほかないという。

だからこそ私は自分の改善へと精を出した。

いろいろ試しては買い物に行き、結局袋をもらって帰る日々。

無駄なお金を使っている自覚があるのかと、誰もいないところで説教をしたこともあったが妖怪に伝わっているのかわからなかった。

数日が過ぎてはじめて私はマイバックのみで買い物ができた。

一体あれは何だったのだろうか。

正体もわからず訳も分からない日々を送っていたなと今思い返す限りである。

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