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姉「まだ寝てないの?」

女性 掌編小説

「まだ寝てないの?」

そう声がした気がして声のした方を向くが誰もいない。

自分の気のせいだと悟った時俺は顔をPCの画面へと戻した。

こんな現象はもう何度となく経験した。

亡き姉の声。

姉が亡くなったのは今年の2月末のことだった。

仕事が多忙になるとよく俺の家に来ては飲んで発散していた。

そんな状態が続いたことからなぜ俺は気づいてあげられなかったのか。

姉は過労死したと聞いている。

姉が来ることが日課となっていて、些細な状態の変化に気づけなかった。

そして姉が亡くなった一週間後くらいから、かつての生活を、思い出をなぞるように、姉の声がするようになった。

姉の声は姉が生前の頃のように俺が寝てない、夜更かしをしてゲームに没頭しているときに届く。

姉の声があることで昼夜逆転を免れていたのは事実で、今も聞こえる姉の声の存在は俺を支え続けていた。

姉が生前の頃もそうだったが、今は現実逃避に徹していて、むしろ時計をみなくなっていたから、途中で語り掛けるその声はまるで天使の囁きのように感じていた。

声がしたらゲームを中断して寝る。

そんな生活を送っていた。

姉が亡くなってから一年。

このままの状態じゃだめだと思い、しぶしぶ就職した。

2000年に設立されたばかりの小規模なソフトウェア会社で、軽ストレスで済むから身の負担にはならなかった。

そうだったからか姉の気持ちがいまいち理解できなかった。

姉の不満は確実に会社での人間関係にあったはずだった。

よく社員についての愚痴をこぼしていたのを思い出す。

「就職すれば何かとわかると思ったんだけれど、見当外れだったな・・・。」

人間関係と言え度、なんでどの程度ストレスを感じていたのか、俺には実感がなかった。

当時の姉の気持ちがわかるようになってから、自分がかなり恵まれた環境に身を置いていたことに気づく。

提示でき宅出来て、そこそこの給与をもらい、帰ったらゲーム配信をすると言った流れだ。

姉が亡くなってから二年が経った。

いつの間にか姉の声は俺に届かなくなっていた。

声が突然に途絶えたことにより、一回だけゲームしすぎて朝になってしまったことがあったが、それ以降は時間を見ながらプレイするようになった。

なんだかんだで姉に頼りきりだったんだなと自覚する。

同年8月13日。

再び姉の声が届くようになりた。

お盆は死者が帰ってくる日だと聞いたことがあったから、要因はこの時期のせいだとすぐにわかった。

姉の声はひどく悲しそうだった。

死後の世界は現実世界とはまた別の意味で大変なのだという。

人によっては娯楽だが、姉にとっては退屈でしかないようだ。

主に他者、とはいっても下界の人間を観察することはできても、下界に手を加えたり、下界から物を取り寄せたりすることが全くできないらしい。

その他もろもろ、姉の不平不満が続き、最後には仕事辞めて死なずに行けばよかったと強く後悔しているようだった。

8月15日を過ぎて、今、やはり姉の声は聞こえない。

また来年聞こえるときが来るだろうか。

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