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私は吸血鬼

川 掌編小説

夜は短し。

一日のたった9時間ほどしかない。

冬季になれば無論外での活動範囲を理論上増やすことはできるが、やはり冷え込む時期に外出したいとは思えない。

そうなると一番日の長い夏が最も活動できる期間ということになる。

たった9時間。

できることはかなり限られる。

もともと吸血鬼ではなかった私にとっては初めの頃はストレスを抱えまくっていた。

日傘である程度日光は凌げるけれどやはり夜間と比べると大きく体力を消耗していた。

息が荒い、身体が鉛のように重い。

そういったこともあり、私は昼夜逆転した生活を送るようになった。

夕方に起きるというのは新鮮だった。

日光を遮るためカーテンは一日中占めたままになっているから安心だ。

24時間営業の店舗に出向いては日用品を購入。

食料は通販で血液を購入し、摂取していた。

それから一年がすぎた。

一年同じ生活をしていれば慣れるものである。

私の収入源は印税やサイト作成などの外注案件だ。

一般の夜勤だと朝まで働かなくてはならないため、太陽光を浴びてしまう可能性があったためだ。

今ではほとんど家にこもりきりの生活になっている。

仕事終わりにちょっと覗きに来るという人の存在もSNSを通じて知っていたので、たまにお絵かき配信をしながら外部の人とのコミュニケーションをとっている。

吸血鬼になってから人間とは疎遠になりがちで、コミュニケーションを取ることなんてスーパーの会計の時くらいだから、何の楽しみもなかったが、インターネットがあることで交流を深めることができているので、毎日が充実している。

人は一人では生きていけない。

吸血鬼になってもなおそう思うことはあった。

一見デメリットづくしのような感じのする吸血鬼であるが、もちろんメリットもある。

不死身で、体内に悪玉菌が入ったとしても再生能力をもって持ちこたえ、その間に身体が抵抗力をつけていくため、この状態になってから私は病気一つしたことがない。

もちろん内的だけではなく、外的な刺激による身体の欠損についてもすぐに回復するので、医療費がかからずに済むというわけだ。

吸血鬼が長寿な理由も恐らくそこにあるのだろう。

私がこんな体になったきっかけは、交通事故にあいかけた男児を救ったことだ。

男児は純粋な瞳で前方を見ており、車になんて見向きもせず、気にもしていなかった。

それゆえ車に轢かれそうなところを私が救ったということなのだがどうやらそれは男児にとって必要なかったことらしい。

「僕はこう見えても100歳なんだぞ。普通の人間が吸血鬼を助けるなんぞ、とんだ命知らずだ。でもこうして私はお前に助けられた。これも何かの縁だ。お前を助けてやろう。」

そう言い渡されてから意識がはっきりとしたのは3日後のことだった。

私は吸血鬼と自称する男児の横で寝ていた。

目を覚ますと男児だ私に声をかける。

「3日も眠っておったわ。お前を助けるかわり、いや代償として吸血鬼にしてしまったわ。」

手で顔をさわる。

つるつるとした頬に、血の通っていないと錯覚するほどの冷たい感触。

まさに人離れした自分そのものだった。

「まぁ若くして吸血鬼になっただけお前は運が良い。これからまた会うことがあればよろしく。」

そう言って自称吸血鬼は部屋から出て行った。

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