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モノクロの恋

恋人 掌編小説

着彩されている方が刺激が多くて好きだ。

モノクロの白黒二色の世界になると明暗だけで夜景なのか単に曇っているだけなのか判断がつかない。

恋をすると色が剥がれていくなんて、自分の気持ちはわかりやすくと不要な能力だった。

モノクロの世界になって、彼と別れてそして一週間程度で目前の景色は着色されていった。

その時私は悟った。

この不便な力を持つ私は恋愛とは縁がないのだと。

手を出せば天罰が下る。

色が奪われるという形で。

この力は欠点こそ多いが、美術好きな私にとっては大きな力をもたらしている。

自分の目で見たまま描けばグレースケールの絵がリアルに描かれるのだ。

カラーからグレースケールに脳内で落とし込むという作業が不要になるから、失恋した後は一人画用紙に向かって絵を描いていた。

絵の出来は家族からも友人からも高く買ってもらえるほどで、技量には確かな自信があった。

でも私はこのまま生涯孤独に生きるのが嫌だった。

一人でいるのは好きだが、独りぼっちは嫌だという何ともB型の象徴とも言える特徴を私は持っていた。

だから私はグレースケールの世界を家族や友人に相談した。

だが誰一人として私と同じ境遇のものは存在しなかった。

中学、高校とずっと恋をしてきたが私の独特の世界観を受け入れてくれる人はいなかった。

彼氏だった人は皆声を揃えて、みんなと違っていて異質で怖いという。

ただ見えているものが白黒なだけなのにどうして標準に適合していないというだけで私を排除してしまうの?

選んではくれないの?

様々な葛藤が私の内面で渦巻く。

私の人を見る目がないということなのだろうか。

友人は力になってくれるが、彼氏は力にはなってくれなかった。

一方的に私を遠ざけようとした。

私のルックスは悪くないようで初対面で引かれることはなく、寧ろ惹きつけていた。

しかし、内心を打ち明けると決まって拒絶するのだ。

そんなことで私は大学生になった。

美大に進学した私は昔から大好きだった絵画に勤しんでいた。

カラーからモノクロへの転換もうまくできるようになった頃、偶然受講する講義が同じだった男性と仲良くなり、授業中はよく隣り合って着席するようになった。

どんどん彼との間が狭まっていくに連れ、やはり色は失われて、遂に彼を取り巻く、いや私の網膜で結像される全てがモノクロに染め上げられた。

これを機にと、私は彼に自分の全てを打ち明けた。

自分が恋するとモノクロの世界しか見えなくなること、ずっとそれで失恋してきたこと。

色々だ。

絶対今まで通りに拒絶されて終わってしまう。

彼との楽しかった思い出もこれまでになるんだろうと私は覚悟していたのだが、返答は今までのそれと異なっていた。

「なんだ僕と同じじゃないか。初めてだよ同じ痛みを知っている人が現れたのは。」

その後彼はきみに会えてよかったと嬉しそうに輝かしい笑みを返した。

「僕に恋をしてくれたように、僕もきみに恋をしていたんだ。だから今はモノクロの絵しか描けない。でも、一緒ならきっとこれに対する解決策も見出せると思うんだ。僕と一緒に来てみないかい?」

その誘いに私は乗った。

そして彼は私の彼氏になった。

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