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蒼の鳥と私

インコ 掌編小説

一人暮らしをするようになってから初めての新しい家族ができた。

私の手のひらに収まるくらいの小さな生命。

青紫色の鮮やかな色を纏った体毛は外側にふっくらと伸びていて、暖かさが私の素肌に伝導してゆく。

ピーコと名付けたインコは私の言葉を復唱して新しい言葉を覚えていった。

意味は理解しているのか定かではなかったが言葉を覚えて発してくれただけで我が子のように嬉しかった。

達成感があった。

毎日癒されていた。

心が温かくなっていくのがわかった。

インコを飼って良かった。

毎日帰るとピーコちゃんがいる。

インコを飼って良かった。

帰ると毎回おかえりと言ってくれる。

インコを飼って良かった。

いつのまにか話せるようになっていたから、相談相手になってくれる。

心底思う。

インコを飼って良かったと。

ピーコちゃんありがとう。

そう言いながら私はピーコちゃんの頬を人差し指と親指を使って軽くつまむようにかいた。

目を瞑り、うっとりするピーコちゃん。

気持ちが良いようだ。

その様子に私は見惚れ、癒される。

可憐な容姿。

身から滲み出る正のオーラを私は受け取り、心のエネルギーを補給する。

僕はある一人暮らしの女性に新居に連れてこられた。

僕には彼女の言葉はわからない。

けれど懸命に僕に話をかけてくるから、それからいくつかの言葉は覚えた。

覚えた音を発すると彼女は笑みを溢し、僕の頭を撫でてくれる。

愛情表現の一つなのか、僕が痒くてかきずらいところを的確に狙ってかいてくれる。

1つ芸をこなすと彼女は大層喜んでくれた。

彼女と日々を過ごす間にだんだんと日本語を理解して行った。

そして僕が新居に来てから2年が過ぎた頃、彼女は外から男を連れてくるようになった。

僕としても話し相手が増えるのは大変嬉しかった。

彼女と僕で言葉での芸を披露すると彼は、

「すごい、俺もインコを飼ってみようかな。」

そう言っては盛り上がっていた。

それから数ヶ月が経って彼女は泣きながら帰宅した。

僕が何を聞かなくても、彼女は僕を手に取り、経緯を次々と語っていった。

どうやら彼に振られたらしい。

「ピーコちゃんは私を一人にしないよね。」

その問いに僕は返答できなかった。

自分の体はもう長くないと痛感していたためだ。

「ねぇ私は誰かに縋ることすら許されないのかな…?私一人になりたくないよ。」

眉間に皺を寄せながら苦しそうに彼女は語りかけた。

そんな顔をしないでくれよ。

僕が見たいのはきみの笑顔だ。

そして僕は彼女の機嫌を取るために最初で最後になるかもしれない強がりなセリフを吐いた。

「僕がいるよ!頼るなら僕にしなさい。」

その選択が正しかったのか、彼女は泣き、それでも少し笑いながら僕を抱いて

「うん」

とだけ言った。

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