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白猫とかくれんぼと指輪

猫 掌編小説

かくれんぼ好きというか、よく神隠しにでもあったようにある日突然消息を絶つ猫がいた。

私が飼っている猫なのだが、とにかく雄猫はいつも私のそばに、身体にくっつくようにするくらい私と時間を過ごすのが一般的なスタイルだったのだが、本当に突然姿を消すことがある。

猫だから散歩の一つくらいするだろうと初回は気にも留めなかったのだが、2、3か月経っても猫は帰宅しなかった。

一体どこへ行ってしまったのか、頭を抱えながら思案した。

猫は場所に懐くというから、新天地を気に入ればそこに入り浸ることも考えられた。

もう戻ってこないのだろうか。

妻が他界した今、白猫と私の二人の生活だったがいつのまにか一人になってしまい、孤独と寂しさを感じた。

翌日猫は戻ってきた。

口にはルビーの指輪が咥えられており、ニャーとなきながらそれを私の手のひらにぽとりと落としていった。

一体こんなものどこから持ってきたのだろうか。

ズボンのポケットにそれをしまうと私は白猫を抱いた。

ふわふわ、ふさふさとした毛の感触が頬を伝う。

後日、指輪を見てあることに気が付いた。

この指輪は昔妻が左手の薬指に付けていたものと合致したのである。

輪の部分に私の名が刻印されている。

間違えない。

私が妻へ渡したものだ。

白猫がこれを持っていたということは、どこかからこれを持ってきたということになる。

そもそもなぜこれが現代の外部の者が持っていたのか疑問だった。

「ここだな。おじいさん、その指輪は今は俺のものだ返却願うぜ。」

「これは元は私の物だ。渡すわけにはいかない。」

「しょうがねぇなぁ・・・。じゃぁちょっとした賭け事をしようぜ。今からやるゲームに俺が飼ったらその指輪は俺の物だ。」

私が同意する前に部屋内にいる白猫を抱きかかえて、立方体の箱の中に入れる。

「その子に何をするんだ。」

「まぁちょっとした賭けさ。あんたが勝てばこの猫は死なない。」

彼のセッティングの様子を伺っているとある思考実験が頭をよぎった。

まさかこいつシュレーディンガーの猫の実験を現実でやろうとしているのか?

ということはさっきポンプのようなものでシュっと中に入れたのはラジウムか。

白猫を入れた箱の内側に青酸ガス発生装置と放射線測定器を手際よく設置していく。

どれも小型のものだが、こんなものを普段から持ち歩いている彼はただモノではないと思った。

そして設置した双方を銅線で結び、準備は完了。

50%の確率と理論上では提唱されているが、実際はそれよりも誤差の範囲から死亡率は高くなると考えられる。

結果は箱を開けるまで分からない。

「さてできた。賭けをしようぜ。」

男は何かを手で操作した。

それと同時に機械の駆動音がした。

数秒後音は止み、男が箱のふたを開ける。

白猫が勢いよく飛び出し、私の足元へときた。

どうやら青酸ガスは発生しなかったようだ。

まぁ青酸ガスが発生していたのなら白猫どころか私たちもただ事では済まないと思うが。

とりあえず白猫が無傷でよかった。

「ちっ、残念だな。ルビーは今回は見逃しといてやるよ。」

男はそう言って、装置一式を持つとその場から立ち去って行った。

一体あの男が誰だったのか、なぜ妻の指輪がこうして手元にあるのかわからず終いだが、一つ分かったことがあった。

この白猫は私に幸運を運んでくれると。

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