千佳は普通の高校生で、特に目立った特技もなかった。
しかし、ある日、彼女のもとにとんでもないものが届いた。
「千佳ちゃん、これ見て！すごく可愛い箒が届いたんだよ！」
友達の潤が興奮気味に千佳の前に現れた。
「え、箒？なんで箒が届いたの？」
千佳は不思議そうに尋ねる。
潤はほくほくと笑いながら説明する。
「これ、魔法の箒なんだよ！自動で空を飛べるんだって！」
千佳は目を丸くし、興味津々で箒を手に取る。確かに、これまで見たこともないような可愛らしいデザインだった。
「でも、本当に空を飛べるの？信じられないな…」
千佳は半信半疑で潤を見つめる。
潤はニコニコと笑って言った。
「信じるか信じないかはお前次第だよ。でも、試してみる？」
千佳は迷っていたが、なんとなくワクワクと胸が膨らんでいくのを感じた。
彼女は思い切って箒に跨り、潤も一緒に乗ってみることにした。
二人は学校の校庭に出て、広い空の下で箒に乗る準備をする。千佳はドキドキしながら箒の柄を握りしめ、潤はニヤニヤと楽しそうにしていた。
「準備はいい？じゃあ、いくよ！」
潤が声をかけると、千佳は腰を浮かせるように箒を蹴り、空に舞い上がった。
風が髪をなびかせ、心地よい高さまで上昇する千佳。
彼女は驚きと興奮で言葉が出てこなかった。
「すごいよ、千佳ちゃん！空を飛んでるよ！」
潤がはしゃぎながら叫ぶ。
千佳は上から見下ろすと、街並みが小さく見えた。
この感覚はまるで夢の中にいるようで、千佳は自分が本当に空を飛んでいるのか疑ってしまった。
しかし、その瞬間、彼女たちの上空に黒い影が現れた。
それは大きな鳥のような姿をしており、千佳たちに向かって急降下してきた。
「危ない！早く下に降りよう！」
潤が叫びながら、千佳と一緒に急速に下降を始める。
しかし、鳥は千佳たちに迫り、箒をつかんで、ひきずろうとした。
千佳は必死に抵抗し、潤も鳥に立ち向かった。
「逃げろ！千佳ちゃん、一人でも逃げて！」
潤が叫ぶが、千佳は潤を置いて逃げることなどできなかった。
「ダメだよ、潤くん！私たちは一緒に逃げるんだから！」
千佳が涙声で叫ぶと、潤は頷いた。 二人は必死に抵抗し、鳥を振り払った。
そして、地上に着地すると、千佳は箒を地面に突き刺し、ふたりで抱き合った。
「本当に大変だったよね…でも、千佳ちゃんと一緒にいられてよかった。ありがとう」
潤が千佳に感謝の言葉を伝える。
千佳は頷きながら、箒を見つめる。
「ほんとうの魔法の箒だったんだね。でも、これからはもう、空を飛ぶことはしないよ。潤くんと一緒にいることが大切だから」
二人は微笑み合い、箒に乗る冒険は終わった。
しかし、彼らの心には一生忘れられない思い出が刻まれていた。
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