本に関する詳細
発売日 2005/6/25
著者名 滝本竜彦
出版社名 角川文庫
重版状況 18刷
発行部数 200万部
あらすじ
ひきこもりの大ベテラン佐藤は気づいてしまった。人々をひきこもりの道へと誘惑する巨大組織の陰謀を!――といってどうすることもなく過ごす佐藤の前に現れた美少女・岬。彼女は天使なのか、それとも……。
コミック化、アニメ化され大ヒットとなった伝説の青春小説!
感想
ちょうど自分が統合失調症にかかったばかりの時に出会った作品でした。
登場人物も同じ統合失調症ということから気になって原作を買うに至りました。
社会復帰がうまくできず、言い訳ばかり並べる日々。
当時大学生だった僕は、もしかしたら自分もこんな風になってしまうのか、そうなったらこの作品に登場するヒロイン、岬ちゃんが助けに来てくれるのか。そんな妄想を膨らませてみたり、そんな現実は起りはしないと現実に振り返って読み進めていました。
ある意味人は不安になると近しい境遇の人を探したくなるもので、見つかるとまだ自分は大丈夫だと思うものです。
きっとそんな気持ちの法則性にも気づかせてくれた作品です。
アニメから入った身としては、原作である小説はかなりリアリティにあふれており、本当に誰の助けもないまま、自分はどうなってしまうんだろうという情景が描かれています。
自分が今を生きる糧ともなっている作品です。
漫画、小説、アニメ、すべてにおいてまったく違った物語になっています。
ネットでの評価
ひきこもり小説というワードに惹かれて読了。
自分も新卒入社した会社で精神を病んでから、療養という名のひきこもり生活を送っている。
そのためこの本に出てくる人物たちの心情に共感し、惹かれていった。
この小説を読んでいて、テーマになっている「陰謀・敵」を心の奥底で求めているのかも知れないと感じた。
「ひきこもりなのは自分が弱いからだ」と自分を卑下する辛さを避けるため、主人公たちは他人や宗教やNHKという仮想の敵を作ったりして、責任転嫁する。
出版してから20年経っているが、まだまだ現代社会で悩む人に刺さる一冊だった。
続編が同人誌で出たので読みました。
テーマは「引きこもり」で、雰囲気は現代版人間失格のようでした。
本家人間失格よりは希望があるので、心に刺さりすぎることはありませんが、人間のダメなところが凝縮されているので、私のような就活中などのフワフワした立場の人が読むと不安を煽られます。
見下したり、反面教師にしたり、切磋琢磨したり、形は様々ありますが、困難から抜け出すためには、人との関わりが不可欠なんだなと痛感しました。
引きこもり、端々から伝わる⚪⚪願望。
オタクカルチャー、哲学、アングラまで、様々な要素があり非常に面白かったです。
序盤からとある病気なのではないですか?という描写に始まり、この物語に一気にひきこまれました。
というのも、この手のモノって私は好きなのです。
ただ、あまり出会えないので読めてよかったです。
話はグイグイ進み、栞を使うことなく読了でした。
ストーリーもそうですが、ひきこもりの私の肌にあった文章があちこちに散らばっており、凄いですねと思っていたら、あとがきを読んで、なるほど〜となりましたね。
好きです。
Twitterでの口コミ
著者の経歴
- 専修大学文学部を中退し、2001年にネガティブハッピー・チェーンソーエッヂで第5回角川学園小説大賞特別賞を受賞して小説家デビューした。
- NHKにようこそ!やエッセイの超人計画を発表。
- 2010年9月 文藝春秋より僕のエアを刊行。
- 2011年3月 角川書店よりムーの少年を刊行。
- 2018年 角川所詮よりライト・ノベルを刊行。
- 2019年 小説投稿サイトのカクヨム、小説家になろうで連載していた「異世界ナンパ〜無職ひきこもりのオレがエルフや猫人間や幼女竜に声をかけてみました〜」で、第5回カクヨムWeb小説コンテスト異世界ファンタジー賞を受賞。
- 2021年1月10日 マンガワンで異世界ナンパをコミカルライズとして連載。
- 2021年12月 異世界ナンパがドラゴンノベルスにより書籍化された。
著者の代表作
- ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ
- NHKにようこそ!
- 異世界ナンパ無職ひきこもりのオレがエルフや猫人間や幼女竜に声をかけてみました
アニメ化、ドラマ化状況
- ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ(ドラマ映画化)
- NHKにようこそ!(アニメ化)
まとめ
目的もなくただ何となく生きてしまったことによる後悔、何者にもなれなかった自分への劣等感など、人間が負い目を感じる部分について鮮明に描かれています。その描写の数々はその著者の経歴がベースとなっており、その人にしか書けなかった作品なのかもしれません。
当時は200万部を突破し、引きこもりが世間一般から受け入れられない世代から大きく反響を受けたのでしょう。時代感を感じる情景などありますが、そのタイムラグもまた、新しい世代の心にも響くのかもしれないですね。興味のある方はお手に取ってみてください。
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