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空が堕ちる日に

地球 掌編小説

人類は重力操作の実験に失敗した。

重力を自裁に操ることができれば、化石燃料を必要とせず、飛行することができる。

その理想の具現化を目指し、実用化を前提として開発を進めたが、第一回テストの重力発生装置の誤作動により、空中と地上、2つの地点においてそれぞれ逆向きに働く重力が生まれた。

空で育ったものは空が地上であり、その逆の観点も無論存在する。

互いに異種族を見るような目を向けており、特に地上の人間は、空の人間を恐れるように教育された。

重力発生装置の影響を受ける者が空へ、そうでないものは地上に引っ張られる。

空の人間は地上の人間よりも感覚器官が敏感なようだ。

同じ人間ということには変わりないのだが、逆さまというだけで異質な者ととらえられてしまう者も少なからずいるようだ。

その該当者が教育を担当しているから驚きだ。

洗脳を前提とした教育に疑問を感じる日々。

本当に空の人は害悪なのだろうか。

そう思案しながら帰路をとぼとぼと歩いていた。

「きゃぁ!!あー、ああそこの人、ちょっと助けてよ。」

木製の遊具で美しい倒立をする少女。

俺の目にはそう映った。

「何呆然と見てるのよ。手がちぎれそうなの、早く助けて。」

こいつはいったい何を言っているのだろうかと半信半疑で少女の言う通りにする。

助けるといってもただ手を握っただけにすぎないが、それで俺はすべてを悟った。

手を握った瞬間に自分の体重が軽くなった感じがしたのだ。

「なんだかふわふわする。」

「そりゃぁ当然でしょう。感じる重力の方向が逆なんだから。」

「そうかということはお前の重さ分、俺が軽くなるんだな。」

「お、重くて悪かったわね。」

「いや俺が案外軽いのかも。身長164cmの体重52kgだからさ。」

「私の方が少し・・・。うんうんなんでもない。」

よくわからないけれど、赤面しながら首をぶんぶんと左右に振っていた。

とりあえず行く当てもないということで俺の家に暫く泊めることにした。

初めての同棲なのに何かムード的なものが上昇せずにいた。

やっぱり逆さまだからなのかな。

地上の食べ物への重力は自分の世界の目線同様にやはり上に働くことはなかったから、食事の時はいつも立ち会った。

「はいあーん。」

「あーん。おいしい。ほんと一人暮らしだから何でも一人でこなしちゃうんだね。」

「勿論。はじめは炊事未経験だったから特に食べ物の不味さには困ったよ。」

「今はそこそこ食べられる味だよ。」

「あぁ、そこそこなんだ。」

「私ずっと、ここで過ごすのかな。」

「俺もそれは困るな。一人暮らしの男にはいろいろと事情があるからな。」

「それだったらさ、明日空に行こうよ。私の方が重くなれば浮くし。」

「わかった。準備しとくよ。」

まったく、俺はとんでもなく面倒なことに巻き込まれているのかもしれない。

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