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抜け落ちるキッチンスポンジ

スポンジ 掌編小説

ある日懸賞でスポンジをもらった。

ちょうど家のスポンジがボロボロだったから取り換えた。

その日からというもの何かしら身も心も軽くなり陽気な状態が続いた。

このスポンジのおかげなのだろうか。

もしかして人の不安を取り除く機能的な力が備わって・・・いるわけないか。

だってどう見ても普通のスポンジじゃないか。

気のせいにしてはいつもの倍以上陽気な気がするけれど、たぶんそういう日もあるってことなんだろう。

女性は気の浮き沈みが激しいっていうし。

きっとそれのせいだわ。

特にスポンジについて深く考えることなくその日はとりあえず寝た。

後日、大学の登校日だったので早めに起きた。

まだ少し眠気があったけれど少々気力で無理やり頭を起こした。

昼はいつも通り学食で済ませるからいいとして、とりあえず朝食を作ろうとした。

「嗚呼、やべぇ昨日夕食食べて、食器を洗ってなかったな。」

食器を洗浄しようとスポンジを持ち洗剤をつけた。

するとどうだろう。

途端に心身が軽くなり明るい気持ちになったではないか。

やっぱりこのスポンジのせいだな。

人の負の情報をすべて吸収してくれるんだ。

だから心身がペンのように非常に軽くなる。

そうだこのスポンジを使って大学の友達の疲れを抜き取ってしまおう。

きっとすごく驚くだろうな。

みんなの反応を見るのが楽しみだ。

そう思いつつスポンジをぎゅっとつかんで水けを取った。

そしてそのまま鞄に入れて持っていくことにした。

学校につくとエナジードリンクを片手に眠気を覚ましてパソコンで作業をしている友人が目に映った。

嗚呼そうか。

今日はレポートの提出日だからみんな全力で完成させようとしているんだな。

良しそうと決まれば・・・。

私はスポンジを片手に持って、そのままスポンジを持った方の手で友人の肩に触れた。

「おはよう。」

後方からいきなりだったためか、少々友人の髪が逆立った。

「ああおはよう。」

私の姿を目で捉えるなり彼女はそういった。

「今日は一段と身体が軽いよ。エナジードリンクのおかげかな?」

やはり触れるだけでスポンジは負の情報を吸い取ってくれることに間違えはないようだ。

その後、いろんな友人たちの負の情報を取り除いて、私はそう快感MAXで家に帰宅した。

「今日はいいことしたなぁ。」

その時は快感に浸っていて洗い物をしていても気が付かなかったけれど、今思えばこの時点で異変は起きてたのだろうと確信していた。

今日は空きの時間が同じで偶然彼氏と一緒になることができた。

最近の私はあのスポンジのおかげでいけていると思っていた。

それとは対照的に彼は少々顔に影が落ちていた。

「どうかしたの?」

事情を聴くとバイトが負担になっており、体調を崩したことにより勉学がうまくいっていないのだという。

そして後日に疲労が残るからだんだん授業についていけなくなっているという。

バイト辞めようかなと一言。

そんな彼を私は見て居られなくて彼の手にスポンジをあてた。

「おまじない。きっと元気が出るよ。」

しかし即効性のあったスポンジも力尽きたのか彼の様態に変化はなかった。

おかしいどういうことだ・・・。

これでは彼を助けることができない。

もうほんと肝心なときにどうして・・・。

あの時無駄遣いするから。

ちょっとここで待っててと彼に告げると家へ駆けて行った。

大丈夫、近いから間に合う。

何とか間に合い、もう一つだけあったスポンジを彼にあてると、目で見てわかるくらい彼は元気になった。

数日が過ぎ、私は彼に呼び出されて

「キミのそのいつも自信に満ちているところが好きだ」

と言われた。

「違う。私は道具に頼っているだけだよ。」

「それでも、頼ってでも僕に元気で綺麗な姿を見せようとしてくれる。そんな君がいいと思う。」

なんて恥ずかしいことを堂々と言う人なんだろう。

でも・・・。

その直球な言葉をくれる彼を私は選んでよかったと思う。

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