ロゴユメ

未完成の漫画

木 掌編小説

午前二時になると本は書き換わる。

いや、元に戻ってしまうんだ。

一度でも本に触れてしまったら無限ループの中に立たされることが多い。

抜け出すには著者の納得のいく物語を描かなければならない。

作者の気持ちを答えよ的な感じの厄介なお題だった。

ことの発端は新刊の小説が入荷されているか、最寄りの本屋へ寄ったことによる。

公式の予定通り、本は入荷されており、私はそれを手に取って会計を済ませた。

帰路につくと、買ったばかりの本を袋の中から取り出し、カバーを眺めた。

目前に切りかかるように描かれた剣士、そしてその後方に描かれた月光。

実に何とも形容しがたい、それにふさわしい言葉が思いつかないほど美しい。

その見事な絵に痛く感動した俺は、帰宅するまで待ちきれなくて、本のビニールを剥がして本のページをめくった。

そこまでは鮮明に覚えていた。

その後何が起こったのか、まばゆく白い光に照らされて・・・。

気づいたら本を片手に見たこともない場所へと転移していた。

迷宮というのが正しいだろうか。

道の先は薄暗く、今にも魔物でも出てしまいそうな雰囲気を醸し出している。

「こりゃぁ何の冗談だ・・・。」

唖然としながら、今の現状に至るまでのいきさつを回想したが、どうもあの本が根源であることに間違えはなかった。

一人迷宮の中をさまよい歩いていると、石板がありこう書かれていた。

午前二時にすべては戻る。

それまでに本の続きを書くべし。

冒頭はこの世界の条件付けだとおもうが、本の続きってなんだ、俺に作家レベルの物を要求しようというのだろうか。

もしそうでなくとも、創作活動の経験のない俺にとっては、苦難な題だった。

だが完成させなければ1からやり直しになる。

きっとどこかに書き記すための物、すなわち道具があるはずだ。

しかし広大な迷宮を探してもそれは見つからず、その日は二時を迎えた。

気が付くと最初の地点に立っていた。

なんとしてもこの地を抜け出して、昨日書店で購入した漫画をゆっくりと読むのだ。

と、ここであることに気が付いた。

何度も同じ日を繰り返すのなら時間を少し無駄にしようともリセットされるから、むしろ今読んだ方が得なのではと思った俺はその地に腰を置いて漫画を読み始めた。

「うんうん、想像通り前巻との繋ぎ方がうまくて非常に面白い。」

一人漫画を読んで笑い更けていた。

そして次の展開を期待してページをめくって俺は絶句した。

コマ割りだけされてページには何も描かれていなかった。

そんなページが最終ページまで続いている。

そこでさっきの石板の文面が頭をよぎる。

「本の続きを書くべし。」

「そういうことか。」

事態をやっと飲み込めた俺はこの本にふさわしい続きを書くことを試みた。

しかしやはり創作の経験はなく続きは思いつかないし文房具だってない。

これは積んだな。

俺は迷宮の仲をあてもなくさまよい、書くものを探した。

そういえばコマ、どのくらいあったっけと本を開いてまたもや驚かされた。

先ほどまでの自分の行動が漫画に記録されていたからである。

書かなくても勝手に書いてくれるってことか。

そしてその日、抜け方を知った日、俺はその本にふさわしい行動を模索しつつ、漫画に記録していった。

そして午後二時を迎えたのだが結果は・・・

「だめだったか・・・。本に望まれるストーリーを描かなければここから脱出することができないかも。」

俺は丸一日をつかって計画を立案し、頭に叩き込んだ。

今度こそはきっとうまくいくさ。

確かな希望を抱きながら俺は前へ前へと進んだ。

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掌編小説私色日記
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