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全てを浄化する能力

山奥の湖 掌編小説

この世の物質のあらゆるものを浄化できるものが地に舞い降りたとしたらどうなるだろうか。

細菌のそれらが温度に関係なく除去できたとしたらこの世の病のすべてはなくなるのではないだろうか。

我々のそんな望みが天に届いてか、あらゆるものを浄化できる、いわばそこに存在するだけで空気清浄機の役割を果たす人材に出会ったのだ。

その者が来てからというもの作物も人間も何も抵抗なく育ち、生活を営んでいた。

木々は茂り、以前に比べて育ちが早くよく実をつけていた。

こんな豊かになったのもあのお方のおかげだ。

我々は村の者を全員揃えて彼をたたえた。

豊作続きだというのに土は生き生きとしていて、農家にとっても大助かりでどんな手品を使ったのかと聞く者さえいた。

だが彼にも要因はわからず、ただ自分の特性なんだと言った。

そんな能力者に転機が訪れようとは村の誰も想像はしていなかったし、むしろ望んでいなかっただろう。

彼は未知の病に倒れこの世を去った。

この日からというもの細菌の感染が後を絶たなくなり、作物も病気で不作となった。

雨もそれに伴って汚染され、人間の身体、生活を不自由にしていった。

一年も経たないうちに村全体を飲み込んだ末、その村は死を遂げ寂れていった。

もうこの地で生きる者はいない。

後に外部の者による分析によりそれの解明が行われた。

浄化をしていたものの正体はすべてをスポンジのように吸収する能力を持ち、体内に様々な菌を持ち合わせることで、外部をクリーンにしていたのだ。

水、土、植物、人間、大気、ありとあらゆるものをクリーンにしてきたことから、まわりは細菌への抵抗力が著しく低下していた。

限界を突破し耐えきれなくなった器は崩壊し、体外へ放出された細菌は近隣に住む者たちから順に蝕んでいったのだ。

人を死傷させるも程のものときいたから、非常に危険なウィルスが蔓延しているのかと疑われたが、現場に出向いたものによれば、我々の住居には普通に存在する菌が存在していただけにすぎないことがわかった。

普段菌に多く触れていなかったものが、菌と急な接触をしたことにより身体が異常な反応をしたのだろう。

日頃より様々な菌とともに生きることは免疫を高めることに寄与するのは間違えないだろう。

村という小規模な団体だったため病に倒れたことの伝達も著しく遅れてしまった。

今後の防止策として、吸収能力のある者が我々のもとに姿を現すかどうかは定かではないが、もし目前にいたのならば進んで保護しようと思う。

それが我々の救いにもなるし、吸収するもの自身の急死を防ぐことにもつながるのだから。

あれから5年が過ぎたが目撃情報は寄せられていないが、どこかにいることを信じて、保護のプロジェクトを取り下げるつもりはない。

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