真理恵は今でも過去のことを思い出していた。
それは真理恵が、自分の過去を知り、その原因を解明するため、かつての研究パートナーである早瀬を訪ねることにしたときのことだった。
真理恵は、前日の記憶が毎朝消えてしまう奇病に悩まされていた。
最初はただの一時的なものだと思っていたが、その奇病は日常生活に支障をきたすまでに進行していった。
彼女は仕事を辞めざるを得ず、友人や家族にも心配されるようになった。
そんなある日、真理恵はある場所で以前の日記を見つける。
それは彼女が研究者であった頃に書いたもので、自分が記憶研究の一環で開発した記憶消去剤の存在を思い出した。
真理恵は驚きと同時に、自分の奇病の原因がこの記憶消去剤にあるのではないかと考えた。
彼女は過去の日記を読み返し、自分が研究者であったこと、そして早瀬という名前のパートナーがいたことを思い出した。
早瀬は真理恵と共に研究を行い、彼女が奇病になった後も彼女を支え続けてくれた存在だった。
早瀬は会うたびに
「初めまして」
そう言っていた。
私も
「初めましてと返していた。」
それが正しいのかどうかはわからないけれど、日記には早瀬のことが書かれているから不思議な気分だ。
もしかして私の創作なのかもしれない。
真理恵はそう思っていた。
真理恵は早瀬に会い、彼の助けを借りて自分の奇病の解決策を見つけることを決意する。
彼女は、かつての研究の目的が「記憶を操作して心の傷を癒やす新しい治療法の開発」であったことを思い出し、自分の奇病もその研究の副作用である可能性を感じた。
早瀬と真理恵は過去の研究資料を見直し、記憶消去剤の効果を逆に利用して彼女の記憶を保つ方法を探す。
しかし、時間が経つにつれて真理恵の奇病はますます進行し、彼女は自分自身の存在を保つために必死に戦っていた。
ある日、真理恵は早瀬との会話の中で、もう一つの選択肢に気付く。
彼女は早瀬に言った。
「もし、私の奇病が治ることができなかったら、私の記憶は全て消えてしまうのかもしれない。でも、それでもいい。私は今の自分を知っているから。」
早瀬は真理恵の言葉に驚きながらも、彼女の強い意志を感じた。
でも真理恵はそのことも忘れてしまうのだ。
それでも彼は真理恵の決意を尊重し、彼女をサポートすることを約束した。
真理恵と早瀬は、最後の手段として記憶消去剤を使い、彼女の奇病を治療することを決めた。
彼らは慎重に実験を進めていった。
そして数日が過ぎて真理恵はベッドで目覚めた。
最初の日記を再び手に取る。
それを読んだ真理恵は感謝の気持ちでいっぱいになり、自分の過去や研究の意義を再認識した。
真理恵は、早瀬の研究所に向かう途中、不安と期待が入り混じった気持ちでいっぱいだった。
彼女は早瀬とは、研究者としての関係だけでなく、深い絆で結ばれた仲間でもあった。
研究所に到着し、真理恵は早瀬と再会する。彼は彼女を見るなり驚きの表情を浮かべた。
「真理恵、お前……記憶が戻ったのか?」
真理恵は頷きながら、自分がどのようにして記憶を取り戻したのかを説明した。そして、自分が研究者であったこと、そして自分が記憶消去剤の実験対象になってしまったことを告げる。
早瀬は深い悲しみを抱えながら、真理恵に向き合った。
「ごめんなさい、真理恵。私があなたを守れなかったせいで、こんなことになってしまったんだ。」
真理恵は優しく微笑むと、早瀬の手を握った。
「過去のことはどうでもいい。私たちは未来を見つけなければならないんだ。」
二人は共同で、真理恵の症状を治療するための新たな方法を開発することに決めた。
彼らの目標は、真理恵が少しずつ記憶を保持できるようになり、新しい希望を持って生活する力を得ることだった。
日々、真理恵と早瀬は研究を進めていった。
試行錯誤の末、新たな治療法が見つかった。
それは、記憶を保持するための特別なトレーニングと、薬物療法を組み合わせたものだった。
真理恵は早瀬の指導のもと、トレーニングを頑張った。
最初は難しいこともあったが、少しずつ記憶が戻っていくことを実感していった。
そして、ある日、真理恵は自分が失った記憶の一部を取り戻した。
彼女はその瞬間、喜びと感動で胸がいっぱいになった。
「早瀬、私の記憶が戻ってきたよ!」
早瀬も真理恵の成長に感動し、喜びを隠せなかった。
「本当によく頑張ったな、真理恵。君は強いんだ。」
真理恵は早瀬に感謝の気持ちを伝えると、自信に満ちた笑顔を見せた。
「私たちはまだまだやることがある。これからも一緒に頑張ろうね。」
そう語ったはずなのに、早瀬は私より先に逝ってしまった。
「私、病気が治ったよ!あなたのおかげで・・・」
早瀬を思い出すたびに真理恵は涙をこぼしていた。
「初めましてなんて、なんて残酷なことを言い続けたんだろう・・・」
忘れたままの方が幸せだったとは言えない、早瀬が人生をかけて大切にしてきたのは、私の記憶だったから。
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