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カフェの小人

カフェ 掌編小説

コーヒーが好きで、いつも行きつけの店でコーヒーを頼んでは啜っている。

私的に味が薄くなければ有名店でなくてもいい。

時より飲むコンビニのコーヒーでもよいと思っているほどだ。

舌は肥えておらず、ごく一般的な過程で育った私はB級グルメであれA級グルメであれどちらも等しくおいしく感じるものだ。

そんな私がよく選ぶのがキリマンジャロだ。

ほろ苦い味わいだがそれでいて自分の口を虜にする。

ケーキとかと組み合わせると、非常に相性の良いことは確信していた。

だが、残念ながら喫茶店によってはコーヒー単体しか扱っていないことのほうが多いため、ケーキに出会えることはレアケースだった。

ケーキに出会えた時はそれはもう気分は高揚することだろう。

そのくらいその組は大好きだった。

毎日違う喫茶店を渡り歩いて、とうとう私はよく混むといわれるちょっと不可思議な場所に足を踏み入れた。

外に備え付けられた看板にはこう書かれていた。

「どんな悩みでもご相談します。」

喫茶店なのに相談とはいったいどういうサービスだろうか。

斬新な看板をスマホで撮り、店内に入ると空いている窓側の席へと腰かけた。

「お客様、オーダーや相談は私までお願いします。」

突然の声に慌てふためいた。

あたりを見回しても、近くに誰もいない。

声の主はどこにいるのか。

「ここですよお客様。」

声のほうを見ると、テーブルに大人の手のひらサイズくらいの小人がいた。

「小人、初めて見たな。」

「我々は人工的に生み出された者でして、この喫茶店の目玉を作る際に考察された後に生まれました。」

「いつも一人だからこう人に話しかけられると、どこか新鮮な感じがするよ。」

そう。

私はいつも一人だった。

とはいっても、会社員であるから全くコミュニケーションをとらないというわけではないのだが、基本的に上辺だけの付き合いだ。

家路についても独身の私に話相手などいない。

そんな気を紛らわすために、始めた喫茶店巡りだったが、今後はここの常連になろうかと早くも決断しかけた。

「それはよかった。ほかのお客様からは自分の内なる気持ちを気軽に長々と話せると好評をいただいております。」

「まずはご注文をお伺いします。」

私はモカを頼んだ。

普段は甘いものは頼まないのだが、この店はそれが人気だと知っていたので、挑戦の意味も込めて注文してみた。

するとスマホを身体全体を使って持ち上げ、何やら操作を始めた。

オーダーはスマホでやるらしい。

まぁ今時珍しくないが、喫茶店では一度も見かけたことはなかった。

「注文完了いたしました。2分ほどでこちらに来ますので少々お待ちください。」

その間にと、私は何か小人に伝えるべき、相談すべき事項を探した。

そして見つけた。

「社内恋愛が禁止されていたのだけれど、他部署に好きな人ができたんだ。この場合、告白したとしてそのあとはどうやり取りをすればいい?」

うーんと腕組しながら数秒考えると、小人は口を開いた。

「退社時刻にここでもどこでもいいです。手軽な喫茶店に連れ出して、温かいコーヒーを飲みながらほっと一息つきながらだんだんと社外で距離感を縮めていくとよいと思います。」

的確な答えが返ってきた。

恋愛だと乱雑に扱われると半身思っていたが、真摯に受け取ってくれた。

うん、決まりだ。

私は常連になろう。

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