ある日、加奈子は学校からの帰り道、聡という幼馴染みと再会した。
聡はいつものようにおどおどとしており、何かを悩んでいる様子だった。
「聡くん、どうしたの?」
加奈子が声をかけると、聡はぎこちなく答えた。
「実は、最近、妖術に興味を持ってしまったんだ。でも、どうやって始めればいいかわからなくて…」
加奈子は驚きながらも、聡の悩みに共感を覚えた。
彼女自身も幼い頃から妖術に興味があり、いくつかの呪文を覚えていた。
「そうだね、私も妖術については少し知ってるよ。一緒に勉強しようか?」
聡は少し照れくさそうに笑って頷いた。 加奈子と聡は、図書館に向かった。
妖術の本を探すために、棚を一つ一つ探し回る二人。
やっと見つけた本は、古びた装丁に経年のヤケが入っているものだった。
「こ、これでいいのかな…」
聡は不安そうに尋ねる。加奈子は笑顔で応えた。
「大丈夫、この本には基本的な妖術の知識が書かれているはずだよ。一緒に読んでみよう!」
二人は興味津々で本を開き、妖術の世界へと足を踏み入れた。
数日後、加奈子と聡は庭で妖術の練習をしていた。
加奈子は様々な呪文やまじないを教え、聡は真剣な表情でそれを繰り返し唱えていた。
「聡くん、すごい!もう完璧にできてるじゃない!」
加奈子が歓声を上げると、聡は照れくさそうに笑った。
「加奈子ちゃんのおかげだよ。本当にありがとう。」
その言葉に、加奈子は胸が熱くなった。
自分の知識が誰かの役に立っているという喜びを感じたのだ。
しかし、その夜、加奈子はふと不安になった。
妖術の力は強大で、誤った使い方をすれば大変なことになるかもしれない。
聡にもそれを伝えなければと思った。
翌日、加奈子は聡に呼び出された。
彼は不安そうな表情で話し始めた。
「加奈子ちゃん、昨晩、夢で妖術のことを見たんだ。でも、自分の力が怖くて、もうやめようと思って…」
加奈子は聡の言葉を聞きながら、彼の心情に寄り添った。
「聡くん、妖術は本当に強力な力だからね。でも、それを使うことで他人を傷つけたり、自分を害することは絶対にしないでほしい。妖術は心の中にある純粋な思いを形にするもの。それを忘れないでね。」
聡は加奈子の言葉に頷き、胸を撫で下ろした。
「ありがとう、加奈子ちゃん。やっぱり僕には妖術を使うことは無理みたいだけど、それでも加奈子ちゃんと一緒に勉強するのは楽しかったよ。」
加奈子はほっとした笑顔を浮かべた。
「私も聡くんと一緒に勉強できて本当に嬉しかったよ。これからもずっと、お互いを支えあっていこうね。」
二人は握手を交わし、図書館に向かった。
妖術の本を返すために、再び棚を探し回る二人。
その様子は、まるで冒険者のように、何か新たな世界を求める旅人のようだった。
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