場面:放課後の整備実習場
(工具の音が響く実習場。智子はバイクのエンジンを分解しながら、美紀が興味深そうにのぞき込んでいる)
美紀「ねえ智子、結局エンジンってどうやって動いてるの?私、授業の説明だとイマイチ分かんなくてさ」
智子「ふふっ、やっぱ気になっちゃうよね。簡単に言うと、ガソリンが爆発して、その力でピストンが動いて…って感じかな」
美紀「爆発!?バイクの中で爆発してるの!?」
智子「そうそう。でも制御されてる爆発ね。ほら、このシリンダーの中でガソリンと空気を混ぜて、それに火をつけると…」
(智子がスパークプラグを指さしながら説明する)
智子「このスパークプラグが火花を飛ばして、燃料に着火!ボンッ!って爆発して、その勢いでピストンが動くの」
美紀「へぇ~、じゃあそのピストンが動くことで、タイヤも回るってこと?」
智子「そう!ピストンがクランクシャフトを回して、それがチェーンを伝って後輪を動かすって仕組み。で、こうやって力をどんどん伝えていくから…」
(智子が手で空中に図を描くように動かす)
美紀「うーん…なんとなく分かるような、分かんないような…」
智子「まあ、実際にエンジン音を聞けば少しは分かるかも?ちょっとエンジンかけてみるね」
(智子がバイクのキーをひねり、エンジンが始動する)
バイク「ブォン!ブォン!」
美紀「おお~!なんかカッコいい!」
智子「でしょ?この音、ただの音じゃなくて、エンジンの調子が分かる大事な情報なんだよ。アイドリングが安定してるといい感じだけど、不安定だと調整が必要だったりね」
美紀「そっかー。でも、こうやって実際に触ると、なんかバイクって生き物みたいだね」
智子「うん、まさにそれ!エンジンの鼓動を感じると、まるで心臓みたいに思えてくるんだよね」
美紀「うーん、私も少しはエンジンに詳しくなったかな?」
智子「まだまだこれからでしょ?じゃあ次は、一緒にオイル交換やってみる?」
美紀「ええっ、もう次のステップ!?…ま、まあ、せっかくだしやってみよっかな!」
(智子が笑い、美紀も工具を手に取る。バイクのエンジン音が心地よく響きながら、二人の工業女子の放課後は続いていく――)
場面:実習場の片隅、オイル交換の準備中
(美紀が工具箱をのぞきながら、少し不安そうな顔をしている)
美紀「ねえ、オイル交換ってそんなに難しいの?」
智子「全然!基本的には古いオイルを抜いて、新しいオイルを入れるだけ。ただ、ちゃんとやらないとエンジンにダメージが出るから、慎重にね」
美紀「そ、それ聞くと逆に緊張する…」
智子「まあまあ、大丈夫!ちゃんと手順通りにやれば平気だから。じゃあ、まずはドレンボルトを外して古いオイルを抜くよ」
(智子がボルトの位置を指さす)
智子「ここにあるボルトをスパナで緩めて…っと、あ、オイル受けの容器はちゃんとセットしてね」
美紀「えっ、もしかして下に垂れ流しになるの!?」
智子「そりゃそうでしょ。オイルなんだからドバーッと出るよ。こぼしたら大変だから、慎重に…」
(美紀がそっとスパナを回す)
美紀「よし…って、うわっ!出てきた出てきた!」
(黒くなったオイルが容器に流れ込む)
美紀「うわぁ…思ったより汚い…」
智子「でしょ?これがずっとエンジンの中にあったら、調子が悪くなるんだよ。だから定期的に交換しなきゃいけないの」
美紀「なるほどねぇ…エンジンの血液みたいなもんだね」
智子「まさにそれ!よし、次はオイルフィルターを交換するよ。これが結構固くて外れにくいんだよね…」
(智子がフィルターレンチを使ってフィルターを外そうとする)
智子「んんっ…!ちょっと固いな…」
美紀「大丈夫?手伝おうか?」
智子「じゃあ一緒に力入れてみよう!せーのっ!」
(2人で力を合わせると、フィルターがようやく緩む)
美紀「やったー!外れた!」
智子「よし、あとは新しいフィルターをつけて、新しいオイルを入れるだけ。ほら、これが新しいオイル」
(智子がオイル缶を持ち上げる)
美紀「結構キレイな色してるね。これがまた真っ黒になるのかぁ…」
智子「そうだね。でも、こうやってメンテナンスすれば、エンジンはずっと調子よく動くんだよ」
美紀「バイクってさ、乗るだけじゃなくて、こうやって手をかけるのも楽しいんだね」
智子「でしょ?エンジンの鼓動を感じながら走るのもいいけど、こうやって整備する時間も大事なんだよ」
(美紀が満足そうにバイクを見つめる)
美紀「…ちょっと、本気でバイクにハマりそうかも!」
智子「ふふっ、それならまずは免許取らなきゃね!」
美紀「あー、そこかぁ…よーし、目指せバイク女子!」
(2人の笑い声が整備場に響く。エンジンの鼓動は、2人の心にも少しずつ染み込んでいく――)
場面:放課後の実習場、オイル交換が終わり片付けをしているところ
(工具をしまいながら、美紀がバイクをじっと見つめている)
美紀「ふぅ…なんか達成感あるね。自分の手でバイクを整備するなんて、ちょっとかっこよくない?」
智子「でしょ?こうやってメンテナンスした後に走ると、バイクが応えてくれる感じがするんだよね」
美紀「へぇ~…あ、ねえねえ、今度乗せてくれない?二人乗りってできるんでしょ?」
智子「んー、免許取りたてだからまだちょっと怖いけど…そのうちね!」
美紀「え~、じゃあ私が先に免許取ったら乗せてあげる!」
智子「あはは、それなら期待してるよ。でも、その前にもうちょっとバイクのこと勉強しなきゃね」
美紀「う…それはそうだけど…」
(美紀がちょっと考え込む)
美紀「ねえ、智子はなんでそんなにバイク好きなの?」
(智子は少し驚いたように目を瞬かせる)
智子「んー、なんでだろ。小さい頃、お父さんがバイク乗ってたのを見てカッコいいなって思ったのがきっかけかな。それで、工業高校に入ってからは、エンジンの仕組みとか知るのが楽しくなっちゃって」
美紀「なるほどねぇ…私はそこまで深く考えたことなかったなぁ」
智子「でもさ、今日エンジン触ってみてどうだった?」
(美紀が少し黙って、バイクの燃料タンクをそっと撫でる)
美紀「…うん、なんかちょっと愛着わいてきたかも。ただの乗り物じゃなくて、生き物みたいっていうか…」
智子「おっ、いいね~!それが分かってきたらもう立派なバイク女子だよ!」
美紀「えへへ、じゃあこれからは智子先生に弟子入りします!」
(智子がくすっと笑いながら、美紀の肩を軽く叩く)
智子「よし、じゃあ次はキャブレターの掃除でもする?」
美紀「ちょ、待って!もうちょっと心の準備させてー!」
(実習場に二人の笑い声が響く。バイクのエンジン音は静かに余韻を残しながら、放課後の時間がゆっくりと流れていく――)
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