黒髪の桃色の日傘をさした女性がそこに立っていた。
顔こそ整っていて、艶やかと表現するのがきっと正しいのだろう。
ロングヘアーの結われれていない様子を見れば、見ただけで髪のサラサラした感じと清潔感が伝わってくる。
凝視している俺に気づいたのか、彼女はこちらに近づいてくる。
一歩、また一歩と歩みを進めると、鼻がぶつかりそうなくらいに顔を寄せると
「キミ、私に興味があるっていう顔をしているね。どこの人だい?」
呼吸するたびに彼女の吐息がかかる。
俺はたまらなくなって、彼女の肩を掴み、後退させた。
「近いですよ。」
「あらそう?私的にはあの距離感が普通なのだけれど・・・。」
あれが彼女の普通なのか。
常人にとっては異常ととれる行動だがそれを普通ととらえる時点で一般的な感性と遠くはなれたような感じになっている。
世間で言われる美人だから許すという言葉が今、当てはまった気がした。
それにしても容姿からは到底予想できぬような特徴を何か持っていそうな人だと俺は思った。
そんな人物に俺は見とれてしまったがために、今近距離で話そうとする彼女が目前に立っているのだ。
「どうしたの、急に黙り込んで。何か考え事でもしているの?」
「いや大したことじゃないんだ。ただ君が少し一般人と違うところがある人だなと思って。」
「そう、それよく言われるわ。私ポーカーフェイスですもの。」
今、ポーカーフェイスといったか。
あれだけ至近距離にいても肩を急に掴まれても動じなかったのはそのためか。
「妙に言葉だけが感情的で表情は崩れなかったから異質な存在と悟ったよ。なんというか意図的にそうしているのならすぐにやめた方がいいぞ。不気味だしな。」
「あら、初対面でそんな毒舌吐かれたのは初めてよ。」
「まぁ思ったことはすぐいうタイプだからな。」
「キミ、それで人から嫌われたり、引かれたりした経験はないのかしら。私は少々嫌悪したけれど。」
思ったことを何でもいてしまうのは悪い癖で、自分で悪事と認知している通り不適切な行為なのだが、ふとしたときに思わず言葉が漏れてしまうときがある。
「俺からしたら、そっちも言いたいことをズバズバ言うタイプだと思うけれどな。」
「心外よ。私は思ったことをすべて話すタイプではないわ。君と同類だなんて考えないし、なりたいとも思わない。一応これでも言葉を選んでいるつもりよ。」
「人は見かけによらないって本当だったんだな。不意に君のことを素敵だと思った自分が憎らしいよ。」
「あら、私の容姿って高く買ってもらえるほどだったのね。嬉しいわ。」
声を聴けば喜んでいるように感じるが、彼女はやはり無表情だった。
「本当に表情崩れないよな。筋肉が硬直しているみたいだぜ。」
「面をかぶっているつもりはないの。どうしてか私の顔は動かない。不可解よね。」
「いつか俺が表情筋が活性化するようなものを見せてやるよ。」
「あら、それは楽しみね。」
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