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神への懇願

女性 掌編小説

「どうにかしてくれ。一生のお願いだ。」

そんなことを言って私に懇願する人間は数えるのを諦めるほどにいた。

神社に住う神といえど、お金をいただいても人間の理想を全て叶えていられるほど余裕と力がないからだ。

神は地元の人の運命を等しく管理することで手がいっぱいなのだ。

「どうにかしてくれ、金ならある。どうか病に倒れた娘を救済してくれ。」

人間から受け入れた願いのうち、比較的緊急性の高いものを選別し、願いを叶えてゆく。

「今日はこれで終わりだな。」

力の源は聖水だ。

金は正直もらっても仕方がないのだ。

1日あたり摂取できる量には限りがあるため、制限を超えて力を使うkとはできない。

力を使うと体内の聖水が消費されるが願いの数に合わせて摂取量を変更するわけにはいかないのだ。

よってそんな制約から日々願いが堆積していく。

正月のような異常な数を数日かけて消化しているのに対し、最近はそのような大きなイベントがなくとも神に懇願する者が続出している気がした。

叶えても叶えても減らぬ膨大な数の願い。

自分にもう少し力があれば…。

そう思うことは最近では増加傾向にあった。

意図的に叶えないのではない。

叶えてあげたいけれど数が多すぎるのだ。

後日新たな噂を耳にした。

最近地方で未知の疫病がはやり、頭を悩ませている大人たちがいるそうだ。

医師にはできないことは神頼みといったところか。

恐ろしい感染力を魅せていると聞いた病はやはり人の手では修復が間に合わないのが現状らしい。

「やれやれ…神にだって病気は伝染するのだけれど…。」

はぁとため息をつくと、貰ったお金の分はできるだけ働こうと努めた。

長らく人間の悩みを解決していると病について分かったことがあった。

人にとりつくウィルスの全ては神の聖水を口にすることで瞬く間に治癒していくのだ。

これならば人間に自分に飲んで貰えばいいだけで、自分が力を使うために聖水を摂取しなくて良いので、助けられる人は増加するのだ。

であるからして、病には聖水を内心的問題の改善には神の力を行使するという手法に移行した。

これで救済できない、したくてもできない毎日嘆かずに済むと心底安心した。

ウィルスのかかっている者と直接つなぐこともしなくて良いので神側への疫病の感染リスクを軽減することに寄与した。

空を見下ろして私は思う。

自分がどれだけちっぽけな存在であろうとも人間は苦しみもがきながらも上へ這い上がる、気は強力な個体なんだと。

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