一人の少女が消息を絶った。
自殺だった。
俺は目の前でこの世を去ろうとした彼女を止めることができなかったのだ。
彼女が亡くなったのはニュースで放送された範囲では母校の中学校校舎3階から飛び降りとなっていた。
昨今では自殺は日常茶飯事だ。
どこにでもある日常であったのだがその日から異変は起きた。
朝目覚めて、ベッドから上体を起こす。
朝日がまぶしく、目をこすりながらスマホのスリープモードを解除してカレンダーを見ながら今日の予定を確認しようとしたときだった。
なぜか自分の記憶とスマホの示す曜日が異なっていたのである。
巻き戻っている?
自分が3日前に遷移することが現実にあるとは思い難かったが、現にこうして、スマホの表記はああなっているし、母親にいても同様の日にちがこぼれた。
どういうわけか自分が自分だけが記憶を維持してタイムスリップしてしまったらしい。
もしかしたらほかの人も同じことになっていることを期待したが、俺の知人は全員的外れで孤独を感じた。
その日はそのまま何人一人として収穫のないまま終わった。
後日、俺は授業をさぼり、他人とは違う行動に出ている者を探した。
すると図書室に一人の少女がいた。
椅子に腰かけて文庫本を読んでいる。
「ライトノベル好きなのか?」
俺は勇気を出して、初対面の相手に話をかけた。
本に栞を挟むと、俺の方へ顔を向けた。
「こんな時間にここに来るなんて、もしかしてあなたもループしているの?」
どうやら彼女の話によると自殺事件があって以来、ずっと同じ時間を繰り返しているらしい。
「俺はま1回目なんだ。詳しいことは知らない。もちろんどうやったらそれが止まるのかも。ただ一つ言えることは、あいつの自殺を見ていたってことだ。それが要因かはわからないが、今回の件の関係者になったんだろうな。」
それを聞くなり彼女は目を丸くした。
「それよ、きっとあの人、水樹さんは私たちに自殺を止めてほしくて、それに気付いてほしくてこの世界に読んだに違いないわ。」
水樹の死が確定するのは明日。
どうにか水樹を説得して世界にとどめることができれば恐らく目の前の彼女の言うエンドレスは解消されるはずだ。
「そういや名前・・・俺は中田裕太。お前は?」
「神崎如月、よろしくね。」
後日俺はまた授業をさぼった。
今度は一人じゃない。
2人だ。
まだ水樹はここにきていないようだ。
3年の3月だからとくに授業に出なくたって支障はない。
肌を刺すよな寒さの中、俺は彼女を待ち続けた。
ギィ・・・。
建付けの悪い旧3年C組の教室の扉が開かれると、少女が姿を現した。
「どうして、どうしてこんなところに人がいるの・」
彼女の、水樹の姿を捉えると俺は問いただした。
「自殺しに来たんだろ?それくらい俺にはわかるさ。」
「だったらなんだっていうのよ。あなたには関係ないじゃない。」
俺は今までのいきさつを彼女に話した。
「そうそれは苦労を掛けたわね。私はきっと、未練があったんだと思う。私自身エンドレスに困惑して、何回死んでも元通りで・・・。まだ私死ぬのを許されていないんだね。」
私は生きるよと彼女は決意した。
そしてその日以後、ループすることはなくなった。
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