「小雪、君のピアノは本当に素晴らしいな」
と、渉は心から感嘆の声を漏らした。
小雪は少し驚いた表情を浮かべながらも、渉の言葉に微笑みを浮かべた。
「ありがとう、渉先生。でも、私はもう音楽が好きじゃないんだよ。」
渉は驚きを隠せなかった。
「なんだって?君はピアノが得意だし、才能もある。なぜ音楽が好きじゃなくなったんだ?」
小雪は深いため息をつきながら、過去の失恋の思い出が胸を押し潰すように蘇った。
「昔、私は大切な人と一緒に音楽を楽しんでいた。でも、彼に裏切られたんだ。それ以来、音楽への情熱が失われてしまったんだ。」
渉は小雪の気持ちを理解しようと努力した。
「でも、君の音楽は素晴らしい。もっと自信を持って、もう一度音楽を愛してみないか?」
小雪は心の中で迷っていた。
渉の言葉が心に響いたが、過去の傷はまだ癒えていなかった。
しかし、彼女はもう一度音楽を愛したいという思いが芽生えていた。
「わかった、渉先生。もう一度音楽を愛してみるよ」
と小雪は決意を込めた表情で言った。
渉はほほ笑みながら小雪の頬を撫でた。
「君が音楽を愛することができるよう、私も全力でサポートするからね。二人で素敵な音楽を創り上げよう。」
二人は音楽学校の練習室で日々練習に励むようになった。
小雪は渉から教わることで、音楽への情熱を取り戻していった。
渉もまた、小雪の才能に感嘆しながら、彼女との共演に喜びを感じていた。
そして、冬のコンサートの日がやってきた。
小雪と渉は舞台に立ち、ピアノとバイオリンのデュエットで観客を魅了した。
小雪の指先からは、心の奥底から湧き出るような音色が響き渡り、渉のバイオリンはそれに寄り添って美しい旋律を紡いでいった。
コンサートの終演後、小雪と渉は舞台裏で息を切らしながら笑顔を交わした。
「本当に素晴らしかったよ、小雪。君の音楽は感動的だった」
と渉が言った。
小雪は微笑みながら渉の手を取り、雪が舞う夜空の下で互いに見つめ合った。
「渉先生、私はもう一度音楽を愛せるようになった。それは、あなたのおかげです。」
渉は小雪の手を優しく握り締めながら、言葉を紡いだ。
「君が音楽を愛せるようになったことが、私にとっても最高の喜びだよ。これからもずっと一緒に音楽を創り上げていこう。」
そして、二人は雪が降りしきる中で初めてのキスを交わし、心からの幸せを分かち合った。
小雪の心の中にあった孤独が、愛へと変わっていく瞬間だった。
彼らの音楽は、人々の心に温かさを運んでいった。そして、小雪と渉は互いに支え合いながら、音楽を通じて新たな旅路に踏み出していったのだった。
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