「水無瀬綾香さん、待って!」
藤村祐樹は息を切らせながら、学校の廊下を駆け抜けた。
綾香は足早に歩きながら、振り返って微笑んだ。
「急いでるの?」
「ええ、実験室で何かを見つけたんだ。絶対に見せたいんだ!」
綾香は興味津々の目で藤村を見つめた。
「それは何?」
藤村は胸を張って答えた。
「逆時間装置だ!」
綾香の瞳が輝いた。
「本当に?私たちが逆に時間を戻せるんだ!?」
藤村は頷いた。
「そうだ。未来から送られてきた未知の装置。私たちの力で、時間を逆行させることができるんだ。」
綾香はワクワクしながら実験室に向かった。
二人は逆時間装置を眺めながら、興奮を抑えきれなかった。
「どうやって使うの?」
綾香が尋ねた。
藤村は装置を指さし、説明した。
「このボタンを押すと、時間が逆行します。ただし、戻すことはできない。一度押したら、もう元には戻せないんだ。」
綾香は深く考え込んだ。
「本当にいいのかしら?時間を逆行させるって、未来に何か影響が出るかもしれないし…」
藤村は真剣な表情で綾香を見つめた。
「だからこそ、私たちが試してみる必要があるんだ。この逆時間装置には、未来の技術が詰まっているかもしれない。私たちが使わなければ、他の誰かが使ってしまうかもしれない。」
綾香は考え込んだ末に頷いた。
「わかった。じゃあ、やってみよう!」
二人は手を取り合い、逆時間装置のボタンを同時に押した。
すると、まるで光の波が二人を包み込んだかのような感覚が広がった。
目を開けると、藤村と綾香は見知らぬ風景に立っていた。
どこか未来の世界のような、高層ビルが立ち並ぶ都市だった。
「すごい…これが未来なんだね。」
綾香の声が微かに震えていた。
藤村も感動を抑えられない様子だった。
「そうだね。未来の世界を見れるって、本当に凄いことだよ。」
二人は興奮しながら、未来の街を散策した。
しかし、数時間後にはもう帰る時間になってしまった。
「さあ、戻ろうか。」
藤村が言った。
綾香は少し寂しそうな表情を浮かべた。
「時間を逆行させるのは、もう一度だけだよね…」
藤村は綾香の手を取り、優しく微笑んだ。
「そうだけど、この思い出はずっと心に残るから。」
二人は再び逆時間装置のボタンを押した。
光の波が再び二人を包み込み、元の世界へと戻っていった。
実験室に戻った藤村と綾香は、無言で逆時間装置を見つめた。
それはただの装置に戻り、未来への扉を閉じるように静かに存在していた。
「藤村くん、ありがとう。一生忘れない思い出を作れて、本当に嬉しかったよ。」
綾香が微笑んで言った。
藤村は頷きながら、綾香の手を握った。
「僕も同じだよ。未来の世界を見れたこと、君と一緒に体験できたこと、本当に幸せだった。」
二人は笑顔で抱き合い、逆時間装置の前で別れを告げた。
しかし、藤村と綾香の心には、未来への探求心という種が植えられていた。
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