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時給が上がる家事

男 掌編小説

うちの過程は不況の中であるから共働きだ。

僕の月収が減給されていなければ、妻もパートで勤務する必要もなかったのに。

共働きになってからというもの特に生活の姿勢を変えることもなく、家事全般妻にまかせっきりになっており、それに不満を抱いてか時々妻から激怒されることがある。

僕には怒られる理由がわかってなかった。

だって味覚も物の鮮度を見極める力も、マルチタスク、記憶力だって科学的に女性のほうが優れていると証明されている。

普通は優秀な人材が多重労働を科せられる、とはいったものの家事がそれほど大変な業務には見えないし、女性がやるのが一般的というイメージが払拭できずにいたから、妻に怒られても痛くもかゆくもなかった。

というより、なぜ起こられるのかがわからなかった。

給料は僕のほうが上で勤務時間も長い。

その分楽をしたって良いじゃないかと考えてしまう。

子供たちは妻が起こるたびに、またかと言わんばかりの表情をしている。

特に僕に対して何か意見を述べるわけでもなく顔に出すだけだ。

そんな毎日が流れてとある日に僕は夢を見た。

目線の中央に神のような神々しい人が立っていてその人はこういった。

家事を手伝うなら時給を上げようではないか。

僕は目覚めてからそのお告げの通り、疑心暗鬼で妻の家事を不器用ながら手伝ってみた。

料理は苦手だった。

大学時代から一人暮らしだったが、買ってきた肉をテキトーに焼いて塩コショウを振るだけでしっかりとした調味料の使い方はわからなかった。

洗濯は洗濯機の買い替えのたびにわからなくなっていた。

家事といえば洗濯物を干すこととトイレ掃除、風呂掃除くらいしかわからなかったが、妻の教えの通りゆっくりと間違えながらもやってみた。

はじめはうまくいかなくてしょうがなくて時給のためだと割り切っていた。

翌月給料は1万円昇給していた。

1万円というと、食品を買うには結構大きな金額で、北海道に住む僕らにとっては少々生活にゆとりを持てる。

やっぱりあの夢は本当だったんだ。

お告げの通りにして正解だった。

僕はその日から積極的に家事を手伝うようになった。

そうした日が続いてからか、家事をするのが体に自然と身についてきた。

今では毎日家事をするようになっている。

いつの間にか妻に怒られることもなく最近は子供に嫌悪されることもない。

昇給のためにやったことが、夫婦仲の改善につながるなんて。

今ではお金のことは気にならなくなり、家族円満を第一と考えて気が付いた時には家事をしているという感じだ。

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