夏樹は学校から帰る途中、偶然にも兄の正弘と出会った。
正弘は高校生で、いつもはクールな性格だが、今日はなぜか不穏な笑みを浮かべていた。
「ねぇ、夏樹。ちょっと一緒に遊んでくれないか?」
正弘が夏樹に声をかける。 夏樹は不審そうに兄を見つめながら、
「遊ぶ?何をするの?」
と問い返す。
正弘はにやりと笑いながら答えた。
「実はさ、今日から俺が超能力を使えるようになったんだ。だから、それを試してみたいんだよ。」
夏樹は驚きながらも、興味津々で
「ほんとうに超能力が使えるの?どんな能力なの?」
と聞く。
正弘はウィンクしながら
「それは秘密だよ。さぁ、ついてきて」
と言って、夏樹を引っ張って歩き出した。
二人がたどり着いたのは、夏樹たちの家の前の公園だった。
公園には他にも子供たちが遊んでいて、賑やかな様子が広がっている。
「さぁ、夏樹。俺の超能力を見せてあげるよ」
と正弘が得意げに言う。
夏樹は期待に胸を膨らませながら、兄の超能力を見守った。
すると、正弘は指を鳴らすと、公園の遊具が一斉に動き出した。
ブランコが自分から揺れ始め、滑り台が勝手に滑り出し、回転遊具がグルグルと回り始める。
驚きと興奮で夏樹は目を丸くし、周りの子供たちも大はしゃぎで遊具に飛び乗っていった。
「すごい!兄ちゃん、本当に超能力が使えるんだ!」
夏樹は歓声を上げながら叫んだ。
正弘は満足そうにうなずきながら、
「そうだろう?俺の超能力は最強だ。でも、これはほんの一部だよ。他にもいろんな超能力を持っているんだ。」
夏樹は興味津々で聞く。
「他にもどんな超能力があるの?」
正弘はにやりと笑って答えた。
「それはまたのお楽しみ。次は何をやろうかな?」
二人は公園を後にし、夏樹の家に帰っていった。
夏樹は兄の超能力に興奮し、次はどんな驚きが待っているのか楽しみにしていた。
しかし、その後の数日間、正弘は超能力の話題を避けるようになった。
夏樹は不思議に思いながらも、兄の気持ちを尊重し、黙っていた。
ある日、夏樹が学校から帰ると、正弘が待っていた。
「夏樹、ごめんなさい。実は、あの日の超能力は全部嘘だったんだ」
と正弘が謝罪の言葉を口にする。 夏樹はショックを受けながらも、兄を見つめて言った。
「なんで嘘をついたの?」
正弘は苦笑いしながら答えた。
「実は、友達に超能力の話をしたら、みんなに笑われてしまったんだ。だから、君にも嘘をついてしまった。ごめんなさい。」
夏樹は兄の言葉を受け入れ、笑顔で言った。
「兄ちゃん、それでも私はあなたのことが大好きだよ。超能力があってもなくても、あなたは私の兄だから。」
正弘は胸を打たれながら、夏樹に抱きしめられた。
「ありがとう、夏樹。本当にごめんね。」
二人は互いの存在を確かめ合い、深い絆で結ばれた。
超能力の嘘がきっかけで、兄妹の絆はより一層深まったのだった。
それからというもの、夏樹と正弘はいつも以上に仲良く、笑顔で過ごすことができた。
超能力がなくても、二人の絆は変わらないのだということを、彼らは心から思い知らされた。
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