ロゴユメ

心の死に装束

ドレス 掌編小説

「御社のもとで精いっぱい頑張っていきたいと思います。」

本心ではなかったが採用されなければこの先生活していけないことくらいわかっていた。

中途採用されてからひたすらに仕事を覚えたりできる限りの業務をこなしたりしてそれなりに充実していた。

だが一年も経てば工場勤務の私は単純作業をひたすらに繰り返すだけで精神的に崩壊していた。

無趣味で毎日興味もない仕事をこなしては帰宅したら寝るのみ。

気を紛らわすために、酒に頼ったこともあるが、寧ろ嫌なことを飲んでいる途中に思い起こしてしまうものだ。

だが次の日になればそんな記憶は飛んでいる。

そんな生活の中、ネット上であるものが話題になっているのが目に入った。

どんな心でも癒してくれる装束。

これであなたの心もすっきり。

毎日の中に快感を。

これはおもしろそうだと思い即購入した。

後日届いた段ボールを開封すると、装束が入っていた。

デザインは地味だが、これで心が安らぐらないい。

そう思ってきてみると、不思議と肩の力が抜け、身体が軽くなり、頭がすっきりとした。

これはすごい。

これなら仕事疲れですぐ寝るということはなくなり、趣味を作り人生に色味がつくだろうと思った。

バイトが怠い。

課題も山積みだというのに俺は、今何をやっているのだろうか。

「はぁー。また帰ったら疲れ果てて勉強の途中で寝てしまうんだろうな。」

肩をがくりと落とし、ふぅとため息をつく。

大学に入ったのはいいが、こんな人生で大学に入った意味が分からなくなっていた。

勉強についていけなくなりそうだからバイトをやめたいのだけれど、生活ができなくなるので断念した。

そんな困惑しているとき、授業終わりに学内LANを使って眠気をとるのに何か良い方法はないか探していると、心と身体を癒すことのできる装束があることを知った。

値段は3000円と服にしては安価だった。

その代わりといっては、デザインがダサいというところがあったが、家でしか着ないということを前提に購入した。

5日ほど空いてそれが届いた。

本当に着るだけで疲れが取れるんだよな。

半信半疑で装束を着用する。

するとどうだろう。

途端に目が冴え、頭も身体もすっきりとした。

「まじかよ、嘘みたいだ。」

俺はその日から毎晩学習を最後までできるようになり、成績も向上した。

「時間が足りない・・・。」

勉強する範囲が広すぎるのと、なかなか覚えてくれない脳に頭を抱える日々。

大学受験まであと一年に差し掛かり、毎日学校から帰ってきては一人で猛勉強していた。

高校の勉強はそこそこついていけるほうだったが、入試問題においてはレベルが段違いで、訳が分からなかった。

「こんな問題解ける奴いるのかよ・・・・。」

机に突き伏せながらため息をつく。

その日の学習はとりあえず終わらせ、時間の管理法やら脳内をクリーンにする方法など様々な視点から検索をかけた。

すると、心身を癒すことのできる装束という記事が目に入った。

これが本当なら一日中勉強に時間を割けるんじゃないかと可能性を感じた。

親に頼んで即購入した。

後日届き、その日から装束を着たまま勉強を始めた。

10時間くらい経っても脳は常にフル稼働できている感じがした。

全く疲れないとはこれほどに開放的なのか。

そして私は第二回の模試でA判定を手にした。

今後の未来に期待できそうだ。

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掌編小説私色日記
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