茜は新入生歓迎会の会場で、賑やかな歓声と笑い声が響く中、緊張した面持ちで立っていた。
彼女の手には新しい紙皿があり、そこには色とりどりの食べ物が盛り付けられていた。
しかし、彼女の心はその皿の中身には向いていなかった。
周囲の友達と楽しむ姿を見ながら、彼女は自分がこの場所にいることに戸惑いを感じていた。
その瞬間、茜は不運にも紙皿を地面に落としてしまった。
周りの人々は一瞬振り返ったが、すぐにまた別の話題に戻り、彼女のことは気にも留めなかった。
恥ずかしさが顔を赤らめさせる。
その時、ふと視線を感じた。
裕也だった。
彼は彼女の目を見つめ、少し驚いたような表情を浮かべていた。
「大丈夫?」
裕也が言った。
彼は人混みをかき分けて、茜の元に歩み寄ると、すぐに新しい紙皿を持って戻ってきた。
「これ、使って。」
その優しさに、茜は心が温かくなるのを感じた。
裕也の笑顔は、まるで春の陽射しのように、彼女の心の隙間を埋めていく。
彼女はその瞬間、彼に心を奪われてしまった。
それから二人は友達として交流を深めていった。
大学の講義の合間、カフェでのひと時、時には公園での散歩。
茜は裕也との会話の中で、彼の思いやりや真剣さを知り、次第に彼に惹かれていった。
彼が過去のつらい経験を打ち明けた時、茜は彼の心の奥に触れた気がした。
裕也もまた、茜の純粋さや優しさに心を打たれている様子だった。
夏が近づくある日、裕也が突然、河川敷で行われる花火大会に誘ってくれた。
茜はその提案に心が躍った。
彼と一緒に花火を見られるなんて、夢のようだった。
彼女は花火大会の日を心待ちにし、楽しみで胸が高鳴っていた。
花火大会の夜、河川敷は色とりどりの明かりで照らされ、周囲には人々の笑い声や歓声が響いていた。
茜は裕也の隣に座り、彼の温もりを感じながら、心が弾むのを感じた。
花火が打ち上がるたびに、彼女の心の中も同じように華やかに彩られていく。
「ねぇ、あの時の新入生歓迎会、覚えてる?」
茜はふと裕也に話しかけた。
「もちろん。君の紙皿が落ちた時、すぐに駆け寄ったよ。」
裕也は笑顔で答えた。
その瞬間、茜の心が高鳴り、嬉しさがこみ上げてきた。
自分の大切な思い出が、彼にとっても特別なものだったなんて。
彼の優しさが、彼女の心に深く刻まれていることを知り、彼女の頬が自然とほころぶ。
「私、その時からあなたのことが好きになったんだよ。」
茜は少し緊張しながら告げた。
彼女は心の奥に秘めていた想いを、ついに口にすることができた。
裕也は驚いたように目を大きく見開いたが、その表情の中に喜びが混じっているのを感じ取った。
彼は何も言わず、ただ彼女の目をじっと見つめていた。
茜はその瞬間、彼の心の中に自分の存在があることを確信した。
花火が夜空に咲き誇る中、茜はそのまま彼の唇にキスをした。
彼の唇は少し驚いた温度を持っていたが、すぐに彼女の想いに応えるように柔らかく触れ合った。
バックヤードで花火がきらびやかに打ち上がる中、二人の距離は一瞬で縮まり、心が一つになった。
茜はその時、裕也の存在が彼女の人生においてどれほど大切かを思い知った。
彼は彼女の心の中に小さな花を咲かせてくれたのだ。
彼女はこれからも彼と共に歩んでいきたいと強く願った。
花火が夜空を彩る中、茜は裕也と手を繋ぎ、二人の未来を夢見ていた。
彼女の心の中で、新しい物語が始まろうとしていた。
何気ない瞬間が、彼女にとっての宝物に変わっていくことを、彼女は確信していた。
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