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ヒル 掌編小説

都会から田舎に移り住んで2か月目になるが、税金や生活費の面で安いとろこを見て田舎に引っ越したのが発端とはいえ、何かと不便なところがあるというか、田舎は自分が畑を所持でもしていない限り、あるいは農家の人間ではない限りは基本やることがなくて余暇の時間が非常に長くて、その時間をどうつぶそうか思い悩むことが多い。

仕事はリモートワークだから、パソコンとネット環境、それと兼業でイラストレーターもやっているから液タブレットも必須だ。

一昔前は液タブなんて金持ちが持つようなもの、企業が持つようなものと思っていたから板タブレットで代用しようと模索したこともあったが、残念なことに位置関係がうまく合わずに、自在に絵を描くことが困難なことに気が付いてすぐに近くの中古店に売却してしまった。

それから数か月がたったころ、大手通販サイトにて液タブが安売りされてたことを機に、中国メーカーではあるが特にためらいもなく、液タブで絵を描けるというあこがれだけで、8万円で液タブを購入したものだ。

今ではそれが活躍している。

有名絵師として名高い私ではあるが、最近ネタが尽きてきた、というか独身で勤務中以外は話し相手がいないため非常に退屈だと思った。

だがそんな私に転機が訪れた。

そんな想いを払拭してくれる存在、いわば話し相手ができたのだ。

ことの発端は、畑周辺を歩いていた時だった。

「ねぇ君。」

誰だ?

「ここここ。」

足元を見ると茶黒いつやつやとした生き物、ヒルが僕のほうに向かって這ってくるのがわかる。

「ヒルじゃないか。君が話しかけてきてるのかい?」

「そうだよ。」

私はヒルを拾い上げ、家に帰宅した。

帰路ではヒルにいろいろと話をかけられたものだが、世間話から都会のはなし、創作秘話など話題が盛りだくさん。

答えられないことはないんじゃないかってくらいいろいろと喋る動物だった。

知能はまさに人間並みで、いつどこでこんな知識をつけたのか、前世って概念がもしかするとあるのかもしれないと思ったものだから、

今はやりの転生ものでも書いてみるかなどと妄想を膨らませたものだ。

この件に関してヒル本人に問うと、時代に適合しているから、一時的にアクセスを伸ばすのならありだねとやさしく返してくれた。

実に声は柔和な響きだった。

そんなのほほんとした雰囲気は、田舎の空気に溶け込んでいるといっても過言ではない。

私は今日、ヒルという人外であはるが、新しい友達であり話し相手を手にしたのである。

ヒルの一生はいつまでかはわからないが、その寿命が尽きるまで私は話しかけ続けようと思う。

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掌編小説私色日記Ⅱ
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