「もう、やめようかな…」
美月はぼやっと呟いた。
彼女は両親を亡くした後、親戚の家に引き取られてからというもの、音楽の夢を諦めてしまった。
右手の機能が制限されているため、ピアノを弾くことができないのだ。
美月は孤独感に苛まれながらも、親戚の家で過ごしていたある日、母の日記を見つけた。
その中で、母が音楽への愛と逆境に立ち向かう姿勢を綴っていた。
「母さん…」
美月は手に握りしめた日記を見つめながら、心の中で囁いた。
「私も母さんのように強くなりたい…」
そうして美月は決意した。
彼女は左手だけでピアノを弾くことを試みることにし、リハビリとともに練習を重ねた。
しかし、公の場での演奏を目指す美月は、人々の冷たい視線や同情、そして自身の限界に直面し、再び挫折を味わった。
「こんな私には無理なんだ…」
美月は自信を失い、涙を流した。
そんな時、美月の通っている地元の音楽教室の先生である杏子が彼女の才能を見出し、特殊な状況に合わせた演奏スタイルを開発する手助けをしてくれた。
「美月ちゃん、君の演奏は特別なんだよ」
と杏子は優しく微笑んだ。
「私たちが一緒に頑張れば、きっと素晴らしい演奏ができるはずだよ。信じてるからね。」
杏子の言葉と支援により、美月は自信を取り戻し始めた。
彼女は再びピアノの鍵盤に向かい、心から音楽を楽しむことを思い出したのだ。
そして、美月は地域の音楽コンクールに参加することを決めた。
そこで彼女は全力を尽くして演奏した。
観客は彼女の情熱と才能に感動し、スタンディングオベーションを送った。
美月はコンクールで特別賞を受賞し、母との深い絆と音楽への愛を再確認した。
彼女は今後も挑戦を続けることを誓い、新たな希望を胸に未来に歩み出した。
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