春といえば別れと出逢いの季節。
高校を卒業してからというもの、私は迷走していた。
私の生まれた家系はお金持ちというわけではなく、大学や専門学校への進学は高校の時点で選択肢にはなかった。
でも本音としては高校時代に好いた人を追って進学したかった。
心の中にもやもやと霧がかかっていた毎日。
そんな中、街中で白色のパーカーを着た彼にバッタリ会った。
突然のことで心臓の音が高鳴った。
少々呼吸がしづらく困惑した。
そんな私をみて彼、隼人は気軽に、軽快に話しかけてきた。
「よぉ綾子じゃないか。」
「隼人、こんなところで会うなんて奇遇だね。」
私の言葉に彼はにっこりと微笑み、そうだねとゆっくりと大きく頷いた。
「この近くの専門学校に通っているんだ。分野はそうだな、映像クリエイトといったところかな。動画編集やアニメーションの制作をメインに行う学科なんだ。」
「クリエイト。」
彼の言葉の一部を反芻すると、次に続ける言葉を脳内で探した。
言葉が出てこないというよりは寧ろ多数の言葉が溢れている。
それだけ彼に伝えたいことがたくさんあるのだ。
「あぁ、うぅ…。」
言葉をうまく音声化できずにいいごもってしまう。
嗚咽ともとれる私の声を聞いて彼は私に言葉を理解したかのように語り出した。
「言いたいことはたくさんあるよね。ゆっくりでいいさ。整理できたら自分のペースで話してよ。俺は聞くからさ。」
彼のその温かな発言に目頭が熱くなり、目から雫が溢れる。
「嗚呼ごめん。俺何か変なこと言っちゃったかな?」
ぶんぶんと左右に首を振って彼の発言を否定する。
違うキミは悪くない。
私が勝手に泣き出しちゃっただけだから。
「人に優しくされることに慣れてなくて…。」
「何?俺の言葉に心が動かされちゃった感じか。それはそれで少し恥ずかしいかな。」
「恥ずかしい?」
彼の言葉に疑問を持った部位を反芻する。
すると彼は内心を取り繕うことなく素直に話してくれた。
「狙って言ったんだ、少し同調するようにね。それでキミは僕の思い通りの反応を示したから。少し…なんていうんだろう…照れ臭くなったんだよね。狙っておいて何だよって感じだよね。」
「あはははは。」
私は見え隠れする彼の可愛げある一面に失笑した。
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