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足を伸ばせる10月10日

気球 掌編小説

10月10日は年間の中でも私が最も自分に対して一番ご褒美を上げる日だ。

なんといってもこのじゅうじゅうという肉汁を想起させるようなごろの良くて食いしん坊な日付は紛れもない、私の誕生日なのだ。

ある意味で私は羽休めしたい日でもあるが、前にいた企業ではそんなのお構いなしに残業に入るのが普通だった。

なんか残業って聞くとあなた優秀じゃないんだねって印象を海外からもたれがちだけれど、上司が仕事を片付けるたびにひまでしょとかいって何かと難癖をつけて仕事の量を増やすのが原因だった。

私はその労働環境に適合してないというか過労になりそうだったので今では誕生日休暇という特例のある企業に就職して日々活動を行っている。

そしてその誕生日が今日というわけだ。

年間で最も私が足を伸ばせる日、何をやってもだれに咎められることのない魔法のような空間。

そんな他社の影響から逸脱した空間もずっとはよくはないけれど、たまには良いかなと思う限りだ。

11月11日だったらポッキーの日で覚えてもらえたかもしれないけれど、じゅーじゅーでも悪くはないかもしれない。

何より覚えやすくて社員一同の脳内に定着しているため、私が不在の日がいつかみんな認知しているということがある意味救いだ。

かといって私は肉食系女子というわけではなく、まぁ人並みにはそれなりに食べるけれど、過食症というほどではない。

おなかはちょっと出ていなくも・・・。

そう思いつつおなかのお肉をぷにっとつねる。

だあああああ。

お肉、お肉あるよぉ。

お酒飲みすぎなのかなぁ、そういえば専門学校卒業するころから飲酒するようになったなぁ。

20代になりたての頃はお酒に弱くて控えめだったけれど、最近は強気で飲んでる気がする。

あれ自体糖分だしなぁ、控えなきゃと少し後ろめたい気持ちを持ちながらも今日という日をエンジョイしようとしていた。

しかしながら特に何かやりたいこともあったわけでもなく、なんとなくサブスクのドラマを眺めるばかりで一向に新しいことをしようとも思わなかった。

外出する気分になったわけもなく、そんな過去もない。

ああ、これじゃぁいつもの休日となんらかわらないじゃない。

会社員というものはみんなこんな感じなんだろうか。

そんな何かしたくても手が動かない絶望感を抱きながらも、今日もなんとなくの日々を過ごしていた。

それでいても、何も考えないというのが本当の意味で体に良いのかもしれない、そう思うとちょっと前向きになれた気がした。

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掌編小説私色日記Ⅱ
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