勤勉に生きてきた。
だが自分の意志とは裏腹に、身体はいつもストップをかけてくる。
ここぞというときにすぐ体調を崩してしまうものだ。
准教授まではなんとかこぎつけたが、その後長く寝込むことになり、教論という職を辞退した。
身体は昔から弱い方だった。
友達の家に遊びに行った帰り、途中で雨に当たった私は後日に高熱を出した。
それからなかなか復帰できなかった経験があるから、自分の体がひ弱さは十分自覚している。
両親とは別居していて家には私1人だ。
結婚はしていない。
いつの日か私を貰ってくれる人はいるのだろうか。
そんな考えがよぎるが、思い切った行動はできない。
もう夕暮れ時だ。
お腹も空いてきたことだし、食料を買いに行こうか。
車を出して近場のコンビニに向かった。
いつも通り品揃えの良い広々とした店内が目に飛び込んでくる。
殆ど何も変わらないコンビニだが、私が貧乏舌だから幾度と口にしても飽きた試しはない。
強いて違うところがあるとすれば、見慣れない新人店員がいることくらいだろう。
あれ…?
いざ意識してみてみるとその店員はサンタのような赤く白いボンボンのついた三角帽子を頭にかぶっていた。
そういえば今日はクリスマスイブだったな。
私は夕食用の弁当をカゴに入れ、カウンターの方へ持っていった。
ついでということで、商品を渡す流れで帽子の話題について触れてみた。
私がなんとなく知りたくなったからだ。
「その帽子…。」
続きを言わずとも店員がああこれですかと言って話を繋げてくれる。
「クリスマス仕様で私個人の判断でかぶっているんです。」
「そうなんですか。他の方はかぶることはないのですか?」
店員は目線をさげ、肩を落とすと、
「残念ながらそういうノリでやってくれる人はいません。元々規律を乱す行為とかで禁止なんですよ本当は。」
「ではなぜ敢えてつけているのですか?」
私が聞き返すと、この店員は目を輝かせてこちらを一瞥すると口を開いた。
「今は店長もいないし、何よりクリスマスを大いに盛り上げたいと思いまして。私がこうして帽子をかぶるだけで、話題がひとつ増えるでしょう?私は皆さんの思い出に残る形でここに立っていたいのです。」
坦々と語る店員にもはや常識なんてものは関係ないのかもしれない。
独断とはいえ、こういうやり方なら私はありかなと思った。
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