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逃げるようでそれでも立ち向かって

満月 掌編小説

黄ばんだ満月。

今日はそれが空に佇んでいる。

年々月との距離は縮んでいるため、いずれ地球に衝突するのではないかと推測できる。

月を見たのは何となくで、ブラック企業で働く中、内心やることはあるのだが、それに面白みを見出せず退屈で仕方がなかった。

温かいお茶を口に含みながら、パソコンのキーボードをカタカタを叩いていた。

「俺の人生、こんな意味のないことに、楽しくないこと思うことに、7、8割も持っていかれてるなんて、少々馬鹿馬鹿しいよな。」

独りごとをこぼす。

お金さえあれば独立して好きなことで生きていくことが可能になるのだろうけれど、最低労働時間という社内の、いわば後進国のようなシステムがいまだに存在するからこそ、時間的自由も、心理的自由も少なかった。

転職してみたいけれど今の自分の学力では到底かなわない望みだった。

入社時のほうが絶対賢かったよなと思いつつも、茶をすすりつつプログラムを組み込んでいた。

さて、コードも書き終わったし、退社時刻まであと5分。

何をするか考えるまでもなく俺はスマホでアプリを起動してソーシャルゲームを開始した。

ガチャを引くのが今では楽しみの一つである。

昔の人が退勤後の酒はうまいというように、俺は仕事終わりのガチャは最高に楽しかった。

そこでレアものが出ればSNSに結果報告としてスクリーンショット入りで投稿しては、感想を楽しめるし、外したら外したで共感してもらえる。

ネットを通じてストレスを解消する。

まさに現代風のひと時の過ごし方だった。

自分が学生時代のころはそういったゲームはなく、家庭用ゲーム機一択だったので、ゲーム機本体がなければゲームを楽しむことなんてできなかったが今は違う。

スマホ一つで完結するから、業務連絡をチェックしていると思いきやゲームなんてことも日常茶飯事だ。

仕事仲間というのは作るべきなのか一時期迷ったこともあったが、今はなくてもいい。

寧ろ出費が減っていいことずくめではないかと思うようになっており、社内では孤独を極めている。

自分の生きがいは社外だからここにいても息苦しいだけだ。

そんななかで数年が過ぎて俺はなぜか上司という立場になった。

仕事の量は以前よりも増えたが、ほとんどが社員の情報管理だったから、楽々にこなせたし、むしろ業務終了時刻までの暇つぶしができて良かった。

今の感覚としては暇つぶしに業務をこなしているから、もう企業がブラックなのかホワイトなのかわからなくなってきた。

まぁやった分給与が入るからまだいいのだけれど・・・。

「ふぅ・・・。」

30歳を超えて言うセリフじゃないと思うが、初めて飲酒をした。

酒にはつまみが必須みたいなことを見聞きしたことがあるがその気持ちはいまいち理解できなかったし、選定が悪かったのかお酒はおいしくなかった。

みんなよくこんな苦いだけの飲料をごくごくと飲めるなと心底驚いた。

SNSに飲料、つまり酒についての投稿をアップすると、数秒でコメントがついた。

やっぱりお酒は合う合わないがあるらしかった。

そんな感じで毎日をなんとなくで、とはいっても娯楽を日常に取り入れながら生きている。

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掌編小説私色日記
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